2023 Fiscal Year Research-status Report
擬等角解析および粗幾何による正則力学系とそのモジュライ空間の研究
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22K03344
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
志賀 啓成 京都産業大学, 理学部, 教授 (10154189)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 擬等角写像 / 双曲幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き一般化されたカントール集合の擬等角同値性について研究した.ここで,一般化されたカントール集合は区間(0,1)に含まれる無限数列から定義されるが,今年度は一つの無限数列から定まるカントール集合が一様領域になるための必要十分条件をその無限数列の言葉を用いて与えることに成功した.より具体的には,無限数列{q_n}が与えるカントール集合が一様領域になるための必要十分条件は,ある正数δより大きいq_nが現れる頻度が有界であるというものである.この条件は具体的に数列が与えられたときに検証可能なもので有用性が高い.また,この条件自体は記号力学系の範疇でも一定の役割を持つものだと期待されるが,その検証は今後の課題である.ここで一様領域とは,複素平面内の領域の性質で,その幾何学的な性質であるが,様々な解析的性質と深く関わっていることが知られている重要な概念である. この結果により,一般化されたカントール集合が標準的な3分の1カントール集合と擬等角同値になるための必要十分条件を得た.また,このような集合は(0, 1)の無限直積空間に含まれていることから,この無限直積空間の自然な確率測度でvolumeを考察できる.今年度は標準的な3分の1カントール集合を含む一般化されたカントール集合の擬等角同値なカントール集合全体がこの確率測度でvolumeが0になることを証明した.この結果は全てのカントール集合について正しいと予想されるが,これについては現在研究中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究のうち,一般のリーマン面において擬円周がDirichlet有限な調和関数への有界作用素を誘導するという研究結果は出版された.また,今年度の研究も論文にまとめて現在投稿中である.さらに,概要で挙げた予想についても進展中である.また,最近典型的な粗幾何の対象である曲線複体の測地線についても考察を進めている.以上のことから概ね順調な進展状況と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の概要の最後で述べた予想の解決に向かう.これは記号力学系とも関連が深いと思われるので,その分野との関連についても考察を進める.また,進捗状況で述べた曲線複体の測地線の研究も進める.このトピックは国内外に関連する研究者が多いので,情報交換を適宜行なって進める.国内外の研究集会の参加や研究者との交流も積極的に行い,情報収集と研究連絡に努める.
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Causes of Carryover |
参加予定の研究集会がオンラインとなり,旅費の予定通りの消化が困難になったことが主な理由である.今年度は所属の変更もあり,セミナーなどの参加・開催が増える予定であるので,それに充てたい.また,研究内容に新規なものが加わったので,その分野の研究書などの購入に充てる.
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