2022 Fiscal Year Research-status Report
Mathematics and applications of discrete Sobolev inequalities
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22K03360
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
永井 敦 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (90304039)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 離散ソボレフ不等式 / 一般化逆行列 / グリーン行列 / 筋交い問題 / グラフ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は各種グラフ上の離散ソボレフ不等式の導出、最良定数・最良ベクトルの計算、および工学への応用研究を行った。得られた研究成果は以下の通りである。 (1) 完全グラフにおけるl^p 型離散ソボレフ不等式の最良定数:N次完全グラフにおける減衰定数ありと減衰定数なしの2通りのl^p型離散ソボレフ不等式を導出して、その最良定数を求めた。l^p型とは大まかにいうと、完全グラフの各頂点にu(i) という平衡位置からの変位を表す量を配置して、絶対値 |u(i)| の最大値をグラフの各辺上の差分 u(i)-u(j) の l^p ノルムの定数 C 倍で評価するものである。定数 C の最小値が最良定数である。過去の研究では、p=2の場合に最良定数の具体的な値をグリーン行列の再生核構造を調べることによって求めたが、今回はより一般的に p>0の場合にグリーン行列を用いない初等解析的な方法で求めた。本研究成果は現在1編の論文として執筆中である。 (2) 筋交い問題への応用:平面格子状に筋交いを複数入れた場合の強度を、離散ソボレフ不等式の最良定数を計算することによって評価する、という研究を2021年度より行っている。本研究で1行n列(n=3,4,5,6)の格子に筋交いを入れた場合、同じ向きに入れるより互い違いに入れた方が強度が増すことを数学的に示した。具体的には筋交い入り格子をグラフと見たときの離散ラプラシアン行列を導出して、そのペンローズムーア一般化逆行列を数値計算した。最良定数は一般化逆行列の対角線値の最大値に等しく、最良定数の大小を比較することによって筋交い格子の強度を見積もった。本研究は1編の論文として、RIMS Kokyuroku Bessatsu に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
離散ソボレフ不等式の最良定数計算はこれまで l^∞ノルムを l^2 ノルムで評価するものがほとんどであったが、今回の研究で l^p ノルムでの評価に拡張することができた。用いた手法はグリーン関数や再生核理論によらない初等解析的手法であったが、グリーン関数との関連についても引き続き調べる予定である。 筋交問題については、n=6までの筋交についてその強度を離散ソボレフ不等式の最良定数を見積もることによって調べた。この結果は一般のnについても成立することが期待されるが、その証明は今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
さまざまなグラフにおいて離散ソボレフ不等式および l^p 型離散ソボレフ不等式を導出してその最良定数を求める。具体的には以下の研究を進める予定である。 (1) l^p 型離散ソボレフ不等式の最良定数:完全2部グラフや正8面体をはじめとする基本的かつ重要な各種グラフ上の l^p 型離散ソボレフ不等式を導出して、その最良定数および等号を達成する最良ベクトルを具体的に計算する。 (2) フラーレン上の離散ソボレフ不等式:過去の研究で明らかにしたC60フラーレン上の離散ソボレフ不等式の拡張、頂点数が60未満の低次フラーレンまたは60より大きい高次フラーレンについて離散ソボレフ不等式研究を進める予定である。具体的には各種フラーレングラフ上の離散ラプラシアンを定義し、対応するグリーン行列(=ムーア・ペンローズ一般化逆行列)を計算して、その再生核構造を調べることによって、離散ソボレフ不等式の最良定数を計算し、フラーレンの「かたさ」に関する情報を得る。 (3) 筋交い問題への応用:これまでの研究においては、格子数が少ない場合について、離散ソボレフ不等式を導出してその最良定数を求めたが、よりサイズの大きい格子や、周期的な格子に問題を拡張して同様の研究を進める。
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[Book] グリーン関数2022
Author(s)
亀高 惟倫、永井 敦、山岸 弘幸
Total Pages
200
Publisher
裳華房
ISBN
9784785315979