2022 Fiscal Year Research-status Report
New developments of hypergeometric functions and hypergeometric groups
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22K03365
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩崎 克則 北海道大学, 理学研究院, 教授 (00176538)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 超幾何群 / 超幾何格子 / K3曲面 / K3格子 / 正則自己同型 / エントロピー / ジーゲル円板 / ピカール数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超幾何関数とそこから派生する概念である超幾何群を研究対象とする。超幾何関数は、複素領域における微分方程式である超幾何方程式の解として定義され、その大域挙動や多価性はモノドロミー群によって測られる。モノドロミー群をモデルとして得られる群論的な概念が超幾何群である。本研究の目的の一つは、超幾何群とそれに付随する整格子(超幾何格子)の性質を研究し、それをK3 曲面上の力学系の研究に応用することである。これは、先の科研費研究課題で着想を得て研究を開始し、本研究課題で継続的に展開している研究テーマである。超幾何群の方法では、超幾何格子がK3格子となる場合を分類し、その場合に超幾何群の生成元を改変することによって、非射影的K3曲面と、その上の正エントロピーをもつ正則自己同型を多数構成することができる。この方法では、さまざまの操作が大規模ではあるが初等的な行列計算に還元できるので、K3力学系の性質を計算機に乗せて具体的に計算できるという利点がある。本年度は、旧研究課題から引き続き、特徴的な不変集合であるジーゲル円板をもつK3曲面自己同型の研究を行った。このような正則自己同型を許容するK3曲面のピカール数は、ある種の制限を受ける。本研究では、超幾何群の方法を用いて、可能なすべてのピカール数について、ジーゲル円板をもつK3曲面自己同型の存在を示すことができた。その過程で、ジーゲル円板の中心を探すために正則不動点公式を利用する必要があった。そのために、不動点公式に付随するグロタンディーク留数の計算方法を開発した。これらの成果をまとめたオリジナル論文が、本年度に受理出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の進捗としては、研究協力者 高田佑太(北海道大学)との共著論文 Katsunori Iwasaki, Yuta Takada, "K3 surfaces, Picard numbers and Siegel disks", Journal of Pure and Applied Algebra, Vol. 227 (2023), no. 3, Article 107215, 31 pages がアクセプトおよび出版されたことが挙げられる。この論文では、先ず、ジーゲル円板を持つような正則自己同型を許容する K3 曲面のピカール数が 0 から 18 の偶数であることを示した。逆に、そのようなすべてのピカール数について、超幾何群の方法を用いて、ジーゲル円板を持つ K3 曲面自己同型を実際に構成することができた。これは、この分野における確かな進展であり、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の主な研究成果は、ジーゲル円板をもつ正則自己同型を許容する K3 曲面のピカール数に関するものであった。その結果は、論文の形では既に専門誌に掲載されたが、口頭発表については、新型コロナウィルスの影響で十分な機会に恵まれなかった。そこで、次年度は、本課題の経費等を活用し、成果発表に努める。すでにいくつかの講演の招待を受けている。さて、ジーゲル円板とは、階数が2の不変な回転領域のことである。すると、当然、階数1の不変回転領域も興味深い研究対象となる。しかし、一般に、階数1の回転領域の方が存在証明や構成が困難である。そこで、次年度は、超幾何群の方法により、階数1の回転領域をもつ K3 曲面自己同型を多数構成することを目標として、今後の研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
本研究においては、旅費が経費の大きな部分を占めている。新型コロナウィルス感染症の発生以来、罹患を避けるため、研究集会等へはオンライン参加とし、出張旅行を控えてきた。2023 年度は、新型コロナの状況の大幅な改善が見込めるので、持ち越しとなった経費を旅費として活用し、研究集会等への参加や、初年度に得た研究成果の発表を積極的に行う予定である。成果発表については、既にいくつかの講演の招待を受けている。また、初年度は、既存の PC や数式処理システム Mathematica で用が足りたため、物品購入の必要はなかったが、器材が古くなってきたため、次年度はこれらを新規に購入して、研究実施に活用する予定である。
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Research Products
(2 results)