2022 Fiscal Year Research-status Report
Geometric analysis of partial differential equations and inverse problems
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22K03381
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂口 茂 東北大学, 情報科学研究科, 名誉教授 (50215620)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 不変等温面 / 不変臨界点 / 二相熱伝導体 / 界面 / 分数冪熱方程式 / 領域の対称性 / Serrinの平面移動法 / 幾何解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は偏微分方程式で記述される問題の解の幾何学的性質の探求を主眼に, 偏微分方程式を介在として, 近年発展の目覚ましい幾何解析と逆問題の視点を有機的に結びつけ, それらをより一層発展させることである。本年度の主な研究成果は2つある。 一つは, ユークリッド空間が有限個の有界領域からなる媒質とそれ以外の非有界媒質からなる二相熱伝導体のとき, 初期温度が片方の相の特性関数であって, 界面が不変等温面(常に等温面になっている曲面)ならば, 有限個の有界領域からなる媒質は一つの球に限ることをSerrin(1971年)の平面移動法を直接2つの媒質に同時に適用する新しい手法により示したことである。内部領域のみの問題や外部領域のみの問題については一般の線形および非線形楕円型方程式にSerrin(1971年)の平面移動法は適用されて来たが, 内部領域と外部領域に同時に適用するのはこの研究が初めてであった。ここでは界面での伝送条件が重要な役割を演じた。 もう一つは, 熱方程式の解の不変臨界点(常に温度の臨界点になっている点)または不変零点(常に温度零の点)の存在と領域の対称性に関するMagnanini-Sakaguchi(1997,1999年)の結果を部分的に分数冪熱方程式に対して示したことである。有界領域上の斉次ディリクレ境界条件は熱方程式の場合は境界上のみで与えられるが分数冪熱方程式の場合は領域の外部全てで与えられる。熱方程式の場合に使えた手法が非局所方程式である分数冪熱方程式に対して使えるとは限らず新たな困難さを克服する必要があった。 例えば, 熱方程式の場合に役に立ったラプラス作用素の極座標表示が分数冪熱方程式については使えない困難さを別の方法で克服した。なお, 本成果は学術雑誌に論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二相熱伝導体の対称性定理にSerrin(1971年)の平面移動法を直接適用できることの発見および分数冪熱方程式の解の不変臨界点または不変零点の存在と領域の対称性の研究において端緒となる成果を得たことなど, 幾何解析と対称性決定の逆問題に関する2つの新展開が得られ, 今後の発展が十分期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの主な海外研究協力者7名(国はドイツ, フランス, イタリア, スペイン, 韓国, インドネシア)に国内研究協力者2名を含めた国際共同研究の継続・発展により本研究を推進する。特に, 現在は新型コロナウィルス感染拡大への対応がより柔軟になったために, 対面での研究打合せが十分可能になっている。
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Causes of Carryover |
2022年度の秋から計画していた海外研究協力者との対面での研究打合せが, 新型コロナウィルス感染拡大の影響で先送りになったため次年度使用額が生じた。 2023年度は, 主に海外研究協力者との対面での研究打合せ旅費として使用する計画である。既に実施・予定されているのは, 4月初めの年度を跨ぐ韓国(仁川)出張, 6月の1週間のイタリア(コルトーナ)出張とそれに続く1週間のフランス(ナンシー)出張である。さらに必要に応じて, 2023年度内の研究協力者との対面での研究打合せ旅費に使用する。
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Research Products
(6 results)