2023 Fiscal Year Research-status Report
流体力学における数値解法の数学解析と解析力学における古典KAM理論の数学解析
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22K03391
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
曽我 幸平 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (80620559)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 計算機流体力学 / 二相流体 / 等高面法 / Hamilton-Jacobi方程式 / 粘性解 |
Outline of Annual Research Achievements |
流体運動のLagrange記述では、流体を仮想的な粒子の集団とみなして初期位置でタグを付け、その軌跡を追跡する写像を考える。 この写像は、Euler記述による流体の速度場が定める常微分方程式のflow mapに他ならない。流体運動における単純な移流現象は、この写像またはEuler記述の速度場が定める線形輸送方程式によって解析可能である。単純な移流現象の典型的な例として、水/油などの二相流体の自由境界運動がある。自由境界を追跡する方法は種々知られているが、本研究では境界面を等高面関数のゼロ等高面として記述する「等高面法」に注目した。等高面関数は線形輸送方程式の解となる。 「等高面法」は計算機流体力学において頻繁に使われている。計算機流体力学の最近の成果として、等高面関数の変化率をゼロ等高面上で安定化させるために、線形輸送方程式ではなく、元々のゼロ等高面を変えないような適当な非線型項を加えた偏微分方程式を利用する方法が知られている。この偏微分方程式は一階完全非線型なHamilton-Jacobi方程式になるため、その数学解析は自明ではない。当該年度の研究では、粘性解理論を駆使することによって、この偏微分方程式の粘性解クラスでの適切性とゼロ等高面の不変性を証明した。さらに特性曲線の方法を駆使することで、粘性解のゼロ等高面近傍における正則性(滑らかさと1階微分の先見的有界性)を証明した。 この結果は、計算機流体力学で使用されている手法の数学的正当性を担保するものである。また、粘性解の局所正則性の問題は一般に非自明なため、偏微分方程式論の観点からも意義のある成果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算機流体力学で広く使われている手法の数学的正当性を示す結果を得た。本研究課題の主要な目的の1つである「流体力学における数値解析的手法の数学解析」に沿う成果が得られたことから、研究は概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
計算機流体力学において、修正された線形輸送方程式を用いた等高面法がいくつか知られいるが、数学解析がなされていないものがまだ残っている。当該年度の研究で得られたアイデア・結果を応用することによって、等高面法の数学解析を進める。
当該年度の研究で示した粘性解の局所正則性の議論は、等高面法に由来するHamilton-Jacobi方程式意外にも適用可能であると期待される。この点に関して研究を進め、粘性解理論とHamilton力学系に関する新たな理論を展開する。
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Causes of Carryover |
社会情勢の影響等により、出張計画に変更が生じたため。翌年度の助成金と合わせて研究遂行のための物品費(数値計算用ソフトウェア、図書、 PC周辺機器など)および出張旅費(研究討論、情報収集、成果報告、学会参加、招聘など)として使用する計画である。
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