2022 Fiscal Year Research-status Report
Study of combinatorial structure of simplicial complexes from partitions of nonpure complexes
Project/Area Number |
22K03399
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
八森 正泰 筑波大学, システム情報系, 准教授 (00344862)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 単体的複体 / 分割可能性 / partitionability / obstruction / Ehrhart多項式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はトポロジー的組合せ論の基礎を支える道具としての単体的複体の組合せ構造の研究を目的とし、特に、nonpureな単体的複体のpartition構造の複雑な様相や関連する諸性質のobstruction構造に注目するものである。 単体的複体がpureであるとは、極大な面(ファセット)の次元が揃っていることをいい、そうでないものをnonpureという。単体的複体の面の集合を極大面を上側とするブール区間で分割できることをpartitionableといい、本研究はこのpartitionabilityおよびそのpartition構造を調べることを主眼としている。Pureな場合はこのpartition構造にきれいな性質があることがよく知られているが、nonpureな場合には複雑な様相を示し、その構造はあまりよく分かっていない。本研究はこのnonpureな場合のpartition構造を軸として、単体的複体の組合せ構造に関して新しい知見を得ることを目指すものである。 研究の初年度にあたる本年度は、この目標への出発点として、nonpureな場合のpartitionabilityを強めた4種のpartition構造の階層構造について、および、partitionabilityに関連する諸性質のobstruction構造に関する知見を整理し、初期的な考察を行った。また、本研究は単体的複体という有限離散構造の組合せ的性質を対象としており、その研究の1つの道具として計算機上でのプログラムを用いた計算という手段も援用するため、初年度にはその計算環境の整備を行い、必要なプログラムの開発も始めた。この他、単体的複体のpartitionabilityに関する知見が応用される先についても検討をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は3年間の研究期間の初年度ということで、研究の出発点として、これまでに得ているnonpureな単体的複体のpartition構造および関連する諸性質のobstruction構造に関する知見を整理するところから始めた。Nonpureな単体的複体のpartition構造に関しては、これまでに得ている4種のpartition構造の階層構造の中で、h-compatibleなpartitionがlayer-compatibleなpartitionと等価であるという事実およびこの構造に重要性があるだろうということを再認識し、これを中心にこの階層構造の詳細を調べることを行った。また、obstruction構造の方に関しては、partition構造に関連するh-triangleとの関連に注目し、これを軸に新しい知見が得られないかということを中心に検討を行った。また、本研究は数学の理論的な研究であるが、単体的複体の組合せ構造という有限離散構造を対象にするため、1つの手段として計算機を援用する手法も利用する。初年度の予算で導入した計算機にLinux環境を構築し、その上での計算手段として、単体的複体のpartitionabilityを判定するプログラムの整備を行った。このプログラムは3次元以下で動くものを以前にすでに作成していたが、これを一般のd次元の単体的複体でも使えるようにするために、計算方法を抜本的に考え直してコーディングを進め、その目途を付けた。この他、partition構造とh-triangle およびh-vectorに関連するトピックとして、格子多面体のEhrhart多項式に関する研究にもその応用先の可能性がないかと考え、特に半順序集合に付随する多面体の構造を調べることも行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は3年の研究期間の初年度ということで、上記のようにnonpureな単体的複体のpartition構造および関連する諸性質のobstruction構造に関する知見を整理するところから始めており、いくつかの考察と結果は得ているが、2年目以降、これらについての考察を深化させてnonpureな単体的複体の分割の構造という本研究の主眼に関する新しい知見を得ることを目指す。特に、4種のpartitionability概念の階層構造を軸としてさらに深化させること、および、h-triangleの非負性と分割の関連のあたりに初年度の初期的な考察があり、ここを中心に本研究の成果を得る方向で研究を進めることを考えている。 計算機を用いる計算に関しても、現在整備しているのはpartitionabilityの判定の部分であるが、これを完成させることに加え、より詳細な計算として、4種のより強いpartitionabilityに関する判定、h-triangleの性質に関する計算、obstructionの計算、など、本研究に関わる種々の計算ができるようにプログラムの開発を行うつもりでいる。これは研究上の予想の検証や具体的な例での性質の観察などの道具として活用し、研究を進める上で役立つものとなると考える。この他に、単体的複体の分割構造が役に立つ応用先にどのようなものがあり得るかということの検討も、本研究の成果を示す意味と、本研究においてどのような性質が重要性を持ち得るかという意味で、進めて行けるとよいと考えている。
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