2023 Fiscal Year Research-status Report
Quantum channel capacity including quantum entanglement and proof of quantum coding theorem
Project/Area Number |
22K03406
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
渡邉 昇 東京理科大学, 創域理工学部情報計算科学科, 教授 (70191781)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子情報理論 / 量子エントロピー / 量子エンタングルメント / 量子通信路容量 / 量子符号化定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
力学系の複雑性を調べる尺度にコロモゴロフ-シナイの力学的エントロピーがあり,その量子系へ拡張の研究は,Connes - Stormer(CS),Emch(E), Connes - Narnhofer -Thirring (CNT), Alicki- Fannes (AF), Ohya (Complexity), Accardi-Ohya -Watanabe (AOW) Kossakowski - Ohya -Watanabe(KOW)等によってなされている。これらの尺度には大きく分けて2つの種類に分類される。CS,E,CNT,AF,AOW,KOWが部分代数系をもとにした定義であり,Complexityが部分状態空間において定義されるものである。コサコウスキー-大矢-渡邉は,AOWとAFを含むより一般的な系に対して定められたKOW力学的エントロピー(KOW dynamical entropy)を定式化した。本研究では、(1) 大矢の力学的エントロピー(Compleity)によって導入された平均エントロピーと平均相互エントロピーを用いて量子通信過程を通した力学系に関する複雑性を調べる研究を行った。さらに,(2) AOWとAFを含むより一般的な系に対して定められたKOW力学的エントロピーを用いて,完全正値写像の共役として与えられる量子通信過程を通した力学系に関する複雑性を調べる研究を行った。 PID制御においては、ノイズへの対処方法の選択が重要な課題であることはよく知られており、様々な方法が提案されていますが、確率論でノイズに対する応答を決定する方法は研究されていません。この研究では、ホワイト ノイズ解析に基づいて、フィルター処理された導関数の確率分析が実行され、フィルタリングされた導関数にホワイト ノイズが形成されます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,量子エンタングルメントを含むチャネルと量子系の力学的エントロピー理論の研究を基に,量子符号化定理の完全な証明を与えることを最終目標とし,その定式化に必要となる数理的基礎をひとつひとつ積み上げていくことを目的とする。そのために,以下の内容について議論することが必要である。 量子エンタングルメントを示すチャネル理論の定式化:近年,光を信号に用いる光通信過程が量子情報通信理論により議論され,様々な結果が得られている。 特に,量子密度符号化や量子テレポーテーションなどの量子系に特有の量子エンタングルメント(2つ以上の量子が互いにもつれた状態)の性質を利用した量子チャネルに対する情報伝送の効率を調べる研究では,シャノン理論との相違点が指摘され,量子エンタングルメントを含む通信過程の定式化の研究の必要性が叫ばれている。量子系の力学的エントロピー理論の展開:量子チャネル符号化の定理の解決には,確率論をベースに定式化されている力学的エントロピーや平均相互エントロピーの量子系への展開が不可欠であり,部分代数上の力学的エントロピーや部分状態空間上の平均エントロピーと平均相互エントロピーが定式化され ている。 量子符号化定理の定式化:未解決のままの量子符号化の定理については,(i)情報源符号化の定理が,シューマッハー・ペッツ等によって部分的に議論されている。さらに,(ii) 量子情報通信理論の最も中心的な課題の一つである量子チャネル符号化の定理は,信号を誤りなく送信するための基準を与え,チャネルや符号化を設計する上で重要な役割を果たすものである。 本研究の最終目標は,符号化の定理を証明するための基礎付けをすることである。そのために,エンタングルメントの数理をもとに定められる量子エンタングルメントを含むチャネル理論,量子エントロピー理論を拡張し,それらを相互に関連付けることが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
チャネル符号化の定理は,エルゴード性を持つ通信過程における情報源のエントロピーがキャパシティより小さい場合には,受信メッセージから送信メッセージをいくらでも高い精度で推定することができることを示している。この定理により,通常の情報通信理論の研究は,効率の良い符号を生成するための理論(符号理論)へと展開していくことになる。現在,量子情報通信理論において,ショア,ベネット,ニールセン等によりコヒーレント・エントロピーやリンドブラット-ニールセンエントロピーなどの量子相互エントロピー型の複雑さの尺度を用いた量子チャネル符号化の定理の議論がなされている。しかしながら,これらの尺度が,負の値を取り,シャノンの基本不等式を満たさないといった情報通信の尺度として都合の良くない性質を持つことが本研究代表者達によって指摘されている。本研究では,最も適切な量子相互エントロピー型の尺度を見極め,量子系のシャノン-ファインシュタインの定理(チャネル符号化定理)の証明の基礎付けを行うことを目的とし,以下の研究を推進する。 1)量子エンタングルメントを含むチャネル理論の定式化の研究では,量子密度符号化や量子テレポーテーションなどの量子エンタングルメントを含むチャネルの特徴付けを行い, (a) 量子エンタングルメントを含むチャネルに対する量子相互エントロピーの性質を調べ,(b) 量子平均相互エントロピーの定式化を基に,量子系のチャネル符号化の定理の定式化に必要な数理的基礎を構築する。 2) 量子力学的エントロピー理論による量子平均相互エントロピーの展開として,(a)部分代数系の量子力学的エントロピーの定式化,(b) 部分状態空間の量子平均エントロピーと量子平均相互エントロピーの定式化,(c) 量子平均相互エントロピーの定式化を行う。 3) 量子チャネル符号化の定理の解決に向けた数理的研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
量子符号化の定理については,(i)情報源符号化の定理が,シューマッハー・ペッツ等によって部分的に議論されている。(ii) 通信路符号化の定理については,量子情報理論の相互エントロピー型尺度の導入に対しても,これらの尺度が基本不等式を満たさないことや超加法性などの様々な問題が指摘されている。本研究代表者達の研究グループでは,これらの問題点の解消した基礎研究をベースとしており,本研究課題の解決に最も近接した位置にあるといえる。本研究計画を通して得られた研究成果は,論文にして公表し,海外を含めた国際シンポジウム等で順次発表していく予定であるが,海外招聘の回数が当初の予定より減ったため次年度使用額が生じました。
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