2023 Fiscal Year Research-status Report
Construction of basic theory for ultradiscrete sytems with parity variables
Project/Area Number |
22K03407
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
礒島 伸 法政大学, 理工学部, 教授 (90422394)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 超離散方程式 / セルオートマトン / 非線形系 / 可積分系 / 相平面解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「符号付き超離散(pUD)系の解析理論構築」を目指すものである.2023年度は,当初計画から先行して取り組んでいた「相平面上でのある領域を別の領域へ写す写像と『粗視化して』解釈する」方法の研究を推進した.具体例として超離散非線形バネ方程式を扱い,すでに大部分の結果を論文として発表しているが,除外していた一部の複雑なケースも取りまとめ,研究集会の査読付き講究録にて発表した.この成果により,本研究テーマの目的の1つである「符号付き超離散系の解の適切な表記方法」の研究は大きな進展を得たと言える. また,当初計画では2024年度に予定していた「採用する差分スキームによって符号付き超離散系に生じる差異」の研究についても着手した.具体的には,上記でも紹介した非線形バネ方程式について,よく知られた中心差分による単純な差分スキームを採用し,対応する符号付き超離散系を構成,解析した.バネの周期振動に対応する数値解を,この単純なスキームによって得るためには,差分間隔や計算回数に注意して慎重に計算を行う必要があり,可積分と主張することは難しいスキームである.対応する符号付き超離散系においても,多くの初期値に対して解が発散する一方で,限られた領域の初期値では有界な解が得られることも分かった.この結果と,論文として発表済みである可積分差分スキームを採用した場合との比較検討を行い,得られた知見を論文としてまとめ,発表する予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「符号付き超離散(pUD)系の解析理論構築」に向けて,研究は概ね順調に進展しているといえる.その理由は次の成果による. pUD系の「相平面上でのある領域を別の領域へ写す写像と『粗視化して』解釈する」方法については共同研究により進展しつつある.具体例として扱っている超離散非線形バネ方程式に関して,既に発表した論文には記載していなかった複雑なケースに対する分析を取りまとめて研究集会の査読付き講究録にて発表した.この成果により,前提となる差分スキームを変更したときの影響の分析を含めた,計算例の蓄積および一般化に向けた研究を推進する基礎が整ったといえる.実際に,単純な差分スキームを採用した場合の超離散非線形バネ方程式の解析を進めている. このように,研究実施計画において予定していた研究内容を,大学院生との共同研究も交えてやや進んだ進度で進めることができているため,進捗状況はおおむね順調といえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
「符号付き超離散(pUD)系の解析理論構築」に向けて「相平面上でのある領域を別の領域へ写す写像と『粗視化して』解釈する」手法の研究をさらに推進する. 具体的には,可積分とは限らない方程式も対象として,さまざまな系にこの手法を適用し,手法の普遍性を検証するとともに新たな課題点の発見に努める.とくに,採用する差分スキームによって,同一の微分方程式から構成されるpUD系の性質が異なる問題について,さらに具体例を蓄積していく.例えば,数値計算において単純な差分法よりも高精度とされているスキームに対して,本手法による分析を行うことを想定している.さらに,整理されつつある解の表現方法を応用し,符号付き超離散化を通して元の系に対して得られる知見についても検討していく.これらの研究は,研究補助員1名を雇用し,より強力に推進していく予定である. また,さらなる応用への準備として,時間単調性以外の性質にも着目した差分系リヤプノフ関数の構成の試みや,ソリトン理論の超離散化に向けた行列式の研究などにも着手できるよう計画していく.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,代表者個人の事情(大学の運営業務)のため想定より旅費の使用が少なかったためである. 研究発表など旅費としての積極利用のほか,研究補助者の雇用や論文のオープンアクセス化など適切な範囲での費目変更により,効果的に助成金を使用していく.
|
Research Products
(2 results)