2022 Fiscal Year Research-status Report
生化学反応の数理モデルに対する確率微分方程式の応用と数値解法に関する研究
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22K03416
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
小守 良雄 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (20285430)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 高次モーメント / 確率積分 / 確率微分方程式 / 安定性解析 / 数値解法 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表的な確率過程の一つに Wiener 過程 W(t) がある.ここで,t は時間を表す変数であり,t を固定すると W(t) は平均 0,分散 t の正規分布に従う.この特徴によって,Wiener 過程は確率解析における重要な確率過程であるとわかる.統計的に独立な二つの Wiener 過程 W1(t) と W2(t) に関して,被積分関数が 1 である確率重積分を考える.そのような重積分は二つあって,その差を A で表す.この時,A と二つの Wiener 過程による単項式の期待値は一般にはわからない.本研究代表者らは,これを与える公式を導出した.その公式は目的に応じて,三つの形式で表現される. 上で述べたような単項式の期待値は,確率解析を進める上で困難として立ちはだかる.実際,本研究代表者らがある解法の数値的安定性を調べる際に,それが障害となり,解析を一旦中断せざるを得なかった.我々の公式は,そのような困難に打ち勝つ為に利用されるだろう. 公式の応用例として,Magnus 展開に基づく数値解法の安定性を理論的に調べ,その性質を明らかにした.また,数値実験を行い,理論の正しさを確認すると共に,理論的に得られる結果の数値的再現の限界も示した.これらの成果をまとめた論文は,論文誌 SIAM Journal on Numerical Analysis への掲載が決まっている.この論文誌は,数値解析の分野における一流紙であり,そこに論文が掲載されるような成果を得た意義は大きい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で報告したことがらは,Magnus 展開に基づく解法を調べる上で見つけた課題である.科研費の申請時では未解決のままであったが,それが解決できたので順調だと言えるだろう.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も海外の研究室を訪問し,海外の研究者と共同で研究を進めて行く.
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Causes of Carryover |
物品費が計画していた金額より低くなった.余った予算は,次年度に旅費で使う予定である.
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