2022 Fiscal Year Research-status Report
不安定性に着目した流体力学系の分解とデータ駆動型手法への応用
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22K03420
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
犬伏 正信 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 准教授 (20821698)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ナビエ-ストークス方程式 / データ同化 / 安定性解析 / リヤプノフ指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,軌道不安定性に着目して流体力学系の分解を調べ,その知見をデータ駆動型手法の研究に応用することである.今年度の成果として,3次元周期境界領域におけるナビエ-ストークス乱流の大/小スケールの分解を調べた.特に,連続データ同化の成否を安定性の問題として調べる理論的枠組みを提案した.安定性は横断的リヤプノフ指数を用いることで判定可能であり,実際に3次元周期境界領域におけるナビエ-ストークス乱流を対象に横断的リヤプノフ指数を計算し,その符号の変化によってデータ同化の成否を特徴付けた. 提案した理論的枠組みでは,分解を定義するスケールを分岐パラメタとして考えるが,それが系の最大スケールに一致するとき,横断的リヤプノフ指数は従来の最大リヤプノフ指数に帰着する.これによって,既存研究によってよく調べられているナビエ-ストークス乱流の最大リヤプノフ指数と,連続データ同化の問題を関連付けることが可能である.特に,最大リヤプノフ指数のレイノルズ数依存性の議論を基に,連続データ同化のレイノルズ数依存性について考察を行った.連続データ同化の問題はデータ駆動型手法としての応用上の重要性だけでなく,ナビエ-ストークス乱流の数理物理的な理解としても重要である.データ同化の成功は,乱流中の大スケールのダイナミクスが小スケールのダイナミクスを決定することを意味するからである.上記の成果に関する論文は現在投稿準備中である. 上記の流体力学系の分解は,ニューラルネットワークを用いた乱流モデルの研究とも密接に関係しており,あわせて研究を進展させている.また,流体力学系のデータ駆動型手法に関連して,深層強化学習を用いた流体混合の最適化に関する論文を出版した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,3次元ナビエ-ストークス乱流の連続データ同化の問題を安定性の観点で特徴付ける理論的枠組みを提案し,横断的リヤプノフ指数を用いた安定性解析を行った.また,横断的リヤプノフ指数と最大リヤプノフ指数との関係は当初の計画段階では想定していなかった展開であり,計画以上に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度導入した安定性解析の枠組みは他のデータ駆動型手法にも広く適用可能である.今後は本成果を様々なデータ駆動型手法の研究へ応用する.
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Causes of Carryover |
2022年度前半は新型コロナウイルス感染症の影響が強く出張が難しかったが,2022年度後半から出張を再開し,次年度においては出張旅費を多く支出する計画である.
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