2022 Fiscal Year Research-status Report
固有値の高速高精度数値計算手法の開発とその数理モデリングへの応用
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22K03422
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
相島 健助 法政大学, 情報科学部, 准教授 (40609658)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 数値線形代数 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代理工学および情報化社会において,計算機を用いるシミュレーション技術およびそれに基づく現象の解析や予測の技術は,非常に重要視されている.計算機シミュレーションにおいて,線形代数的な数値計算は一つの基盤となるが,その学問体系を数値線形代数などと呼ぶ.本研究は数値線形代数の中でも,一つの柱をなす固有値計算に焦点を当てている.固有値計算の数学理論の深化とその数理モデリングへの応用を目指している.
今年度の研究では,主に統計モデルとの関係で固有値計算技術の応用の可能性を検討した.具体的には,線形回帰モデルをより実用的な問題に合わせて,説明変数が確率的なノイズを含む場合を検討した.現存のノイズに対してロバストな数値計算手法として,全最小二乗法が知られている.近年,応用上の観点から,線形回帰モデルに対してもノイズの制約として様々なモデリングが検討されているが,全最小二乗法が一致推定量となるモデルは古典的なモデルに限定される.今年度は,本研究によりこの問題を部分的に解決した.
具体的な研究成果としては,ある種の線形制約を課したモデルに対して,全最小二乗法に適切な射影を施すことで,一致推定量を与えることを数学的に証明した.この証明の理論背景としては,大規模固有値計算に標準的に用いられるレイリー・リッツの技法,そして特異値分解の最適性が核となっており,固有値計算の数学理論の観点からも非常に興味深いものである.固有値計算手法に内在する計算技術が,応用分野に直接寄与できる可能性を示したという点も意義は大きく,今後の研究の継続の重要性を示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全最小二乗法という重要な計算技術に対して,固有値計算技術に基づき一定の研究成果をあげており,講演や執筆作業も含めて順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度では,統計モデルのレベルで全最小二乗法の応用とそのための数値線形代数的な数学理論を与えたが,今後は統計学より応用分野に近いところから,有意なモデリングとその数値計算について,固有値計算技術の応用の可能性を検討する.また,最小二乗法に限らず,固有値計算技術が応用できるモデリングを探求する.
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Causes of Carryover |
次年度以降に大きな国際会議があること,論文をオープンアクセスにすることを考慮して次年度使用とした.
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