2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K03450
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
泉田 勇輝 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (70648815)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自律熱機関 / 熱効率 / エントロピー生成最小原理 / 線形不可逆熱力学 / ローレンツ方程式 / 熱対流 |
Outline of Annual Research Achievements |
自律熱機関を特徴付ける普遍法則に関して、本年度は主に以下の成果を得た。 低温度差スターリングエンジンの数理モデル研究(Izumida, PRE 2019)から、自律熱機関を線形不可逆熱力学によって記述する際に一部の自由度を断熱消去することによって元のダイナミクスにはないOnsager対称性と類似の対称性が創発することが示されている。本研究ではこの対称性の創発がエントロピー生成最小原理の下で一般の非平衡定常熱機関において成立する可能性を理論的に検討した。エントロピー生成最小原理は拘束していない熱力学的力に共役な流れが消えるような状態として定常状態を特徴付ける。検討の結果、低温度差スターリングエンジンの断熱消去された状態がこの状態に対応することが示唆されている。今後より一般の自律熱機関においてこの予想を検討する予定である。
自律機関の中にはMalkus-Lorenz水車のようにカオス的な振る舞いを示す例がある。カオスを示す代表例であるローレンツ方程式はもともと熱対流モデルの流体力学方程式から導出された。そこで熱対流を非平衡熱機関の一種とみなし、レイリー数を変えた際の熱効率の分岐図を求めた。定常ダイナミクスからカオスダイナミクスへの転移によって効率が一般に低下することを示すとともに、最大効率も定式化した。以上の結果は大気の運動を複雑な自律非平衡システムとして捉えた言わば「複雑系の効率論」としての意義があると考えている。本成果は現在投稿中である(Zhen Li and Y. Izumida, arXiv:2302.03887)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後より詳細に検討する必要があるものの理論的な進展も一定程度あり、論文投稿もできたため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
エントロピー生成最小原理に基づく定常状態熱機関の記述についてより詳細に検討していく。
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Causes of Carryover |
論文出版費と旅費の利用がなかったことによる理由が大きい。次年度は本研究を計画的に進めこれらに優先して利用する予定である。
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