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2023 Fiscal Year Research-status Report

境界誘起型量子開放系の定常状態における整流作用の統一的理解と新たな輸送特性の探索

Research Project

Project/Area Number 22K03458
Research InstitutionNihon University

Principal Investigator

鈴木 秀則  日本大学, 歯学部, 講師 (60408698)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords量子開放系 / 非平衡定常状態 / 輸送特性
Outline of Annual Research Achievements

少数量子スピンの系に対する境界誘起型の定常状態の数値的な解析を前年度に引き続いて行った。流れを誘起する外界からの駆動力に加えて、系を熱平衡へ導こうとする熱浴が接触している場合について、前年度に導入した熱浴のモデルでは量子マスター方程式における詳細つり合い条件を満たし最終的に熱平衡には達するが、その過程のタイムスケールが熱浴の温度に大きく依存してしまい、駆動力の大きさとの相関により到達する定常状態を調べるには適切ではなかったことから、熱平衡への過程のタイムスケールに下限が設定されるように熱浴との相互作用パラメータの定義を修正し、解析を行った。この修正した熱浴のモデルを用いて、境界誘起型の定常状態に対する熱浴の効果をXXZ模型に左右に符号の異なる磁場を印加した系に対する整流作用について調べ、相互作用の異方性パラメータの符号によって整流係数の熱浴との相互作用パラメータ依存性が大きく異なることが見いだされた。これは熱浴無しで境界誘起型の定常状態として実現されるスピン状態と、熱浴のみとの接触による熱平衡でのスピン状態の比較により理解できることが分かった。さらに、熱浴の接触により定常状態の密度行列に含まれる状態が制御されることになり、整流作用の理解に向けて新たな視点となった。また、次近接相互作用を持つHeisenberg模型での境界誘起型の定常状態において、カレントがほとんど流れなくなるパラメータ領域の存在を発見した。このことは系の厳密なエネルギー固有状態からの解析によって説明でき、エネルギー準位の分布とカレントの大きさの関係を解明するにあたっての重要な手掛かりと言える。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題の2年目にあたる2023年度は、境界誘起型の定常状態おける整流作用の条件の探索を主に行う計画としており、様々な系に対して整流作用の有無を探索することから統一的な原理を探ることを目論んでいたが、前年度より着手した、定常状態に対する系と熱浴の相互作用の効果に関する研究に多くの時間を割いた。熱浴との相互作用は系のエネルギー準位に対応して定常状態に密度行列に含まれる状態を制御する役割になっており、熱浴の効果を調べることで境界誘起型の定常状態や整流作用に対する統一的な理解に向けての新たな視点をもたらした。また、新たな輸送特性の探索に対しては、次近接相互作用を持つスピン系に対する特徴的な現象を見出したが、この現象の解析を進める中で、境界誘起定常状態でのカレントの大きさと系のエネルギー準位の分布の関係性が明らかになりつつある。以上、境界誘起型量子開放系の定常状態に対して、計画時に想定していたものとは異なる視点からも理解が進んでおり、本研究課題としてはおおむね順調に進展していると考える。

Strategy for Future Research Activity

前年度までに得られた数値計算等の結果を基にして境界誘起型量子開放系の定常状態における整流作用の統一的理解に向けた解析を引き続き進めていくと同時に、さらに様々な系について数値的、解析的な計算から新たな輸送特性の探索を行っていく。熱浴との相互作用が定常状態の密度行列に含まれる状態を制御する役割を担うという視点に基づいて,整流作用の特徴を統一的に調べ、これをまとめ上げる。系のエネルギー準位の分布と定常状態のカレントの関係性については非常に興味を持たれるところであり重点的に進めていくことになる。また、本研究計画の最終年度であることから、これまでの成果をまとめた論文の作成を進めていく。

Causes of Carryover

学会旅費の支払いに別の研究費を使用した分を物品費に充てた際の端数分が発生したために次年度使用額が生じた。
令和6年度、関連図書などの物品費に充てて使用する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2023

All Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results)

  • [Presentation] Steady-state in boundary-driven nonequilibrium quantum spin system interacting with heat bath2023

    • Author(s)
      Hidenori Suzuki, Yoichiro Hashizume
    • Organizer
      28th International Conference on Statistical Physics, Statphys28
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] Relaxation processes and steady-state currents in boundary-driven nonequilibrium quantum spin systems2023

    • Author(s)
      Yoichiro Hashizume, Hidenori Suzuki
    • Organizer
      28th International Conference on Statistical Physics, Statphys28
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 熱浴と接する境界誘起型非平衡スピン流についての解析2023

    • Author(s)
      44)橋爪洋一郎,鈴木秀則
    • Organizer
      熱浴と接する境界誘起型非平衡スピン流についての解析. 日本物理学会2023年第78回年次大会

URL: 

Published: 2024-12-25  

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