2022 Fiscal Year Research-status Report
温度成層下の乱流境界層における秩序構造とその空間分布の解明
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22K03462
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
水野 吉規 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 研究官 (70402542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 直人 東京電機大学, 工学部, 教授 (80512730)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 乱流境界層 / 温度成層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では風洞実験と直接数値シミュレーションの2つのアプローチにより、温度成層下の乱流境界層に内在する、運動量や熱の輸送を担う秩序的な乱流構造の多面的な理解を目標としている。各アプローチの役割として、実験ではそのような乱流構造の集団としての乱流場の大域的な性質、数値シミュレーションでは個々の乱流構造のダイナミクス、を明らかにすること目指す。計画の初年度では、研究手法の検討と確立を目的とした予備的な実験や数値シミュレーションを実施した。 その中で、気象研究所の大型風洞施設における実験により、不安定成層下の乱流境界層に生じる速度乱れの大規模構造に関する統計的な特徴を調査した。具体的には、異なる高度における複数の水平面内の速度場を粒子画像流速測定法により取得し、弱い不安定温度成層下において流れ方向に伸びたロール状の構造が現れる条件と、それらのスパン方向の特徴的な長さスケールを実験的に明らかにした。(成果の一部は先行的に国際会議において発表された)このような大規模構造の存在は、輸送を担う小規模な乱流構造の空間分布やダイナミクスとも密接に関連すると考えられる。また、当風洞施設に新規整備された風速測定装置の試験運用や解析手法の確立も行い、次年度以降の本実験の準備を進めた。 直接数値シミュレーションについては、せん断速度と温度勾配を一様に与えた空間領域における乱流の数値計算手法を実装、九州大学情報基盤研究開発センターにおいて予備計算を実施した。本計算で調査すべき計算条件の洗い出しを行い、次年度以降の本計算の方針を定めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は研究手法の検討と確立を目的とした予備的な実験や数値シミュレーションを実施する計画であった。気象研究所の大型風洞施設では、不安定成層下の乱流境界層の実験を行い、風速場を粒子画像流速測定法(PIV)により取得した。浮力の効果により現れる乱流構造の特徴的な空間スケールの不安定度や高度依存性などを調べ、あわせて実験や解析手法を検討を行った。また、風洞施設に新規整備された平面上3成分の流速を取得できるステレオPIV装置の試験運用も行い、以降の本実験に向けて順調に準備を進めた。 また、一様なせん断速度および温度成層下の乱流の直接数値シミュレーション手法を実装し、九州大学情報基盤研究開発センターにて予備計算を実施した。系を特徴づける無次元数を確認し、本計算で調べる無次元数の範囲を決定するなどして、今後の準備を順調に進めた。 以上の状況から、研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
風洞実験については、気象研究所の大型風洞施設において本実験を開始し、ステレオPIVなどによる速度場の大域的かつ多次元的な情報の取得を進める。温度成層が不安定なケースの実験は主に冬季に実施し、初年度にも調査を行った大規模構造と乱流輸送を担う比較的小規模な構造の関係に着目しながら、後者の抽出と空間分布の特徴を調べる。成層の強さが異なる複数のケースの実験を行い、成層の強さの影響についても調べる。また、安定成層の場合の実験も実施し、間欠的に現れると予想される乱流構造の抽出と空間分布の特徴づけに取り組む。 直接数値シミュレーションについても本計算を開始する。当面は一様な安定成層下のせん断乱流のシミュレーションを行い、乱流のエネルギー収支の時空間分布を調べる。特に安定成層下において特徴的な現象である重力波の役割に着目し、その生成から砕波までの時間発展、砕波による間欠的な乱流エネルギーの生成、エネルギー輸送への寄与などを明らかにすることで、乱流構造のダイナミクスの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
風洞実験に用いる消耗品費のほとんどは海外製の可視化用フォグ液を購入するための費用としていたが、令和4年度は円安や燃料費の高騰などによりその価格が以前の120%程度までに上昇していたため、購入を控え、気象研究所の所蔵するフォグ液を代わりに用いて実験を行った。そのため、支出額は当初の予定より大きく下回った。また、直接数値シミュレーションを九州大学情報基盤研究開発センターにて実施するにあたり、当初の想定よりも低額の料金プランであっても予備計算の遂行には支障がないことがわかったため、そちらに切り替えた。 現在もフォグ液の価格上昇が続いているのに加え、今後も国内外の学会発表の際に使用する旅費の高騰も懸念される。次年度の研究遂行に支障がでないように、実験の消耗品費や旅費には当年度から繰り越された経費を有効に活用する予定である。
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Research Products
(1 results)