2022 Fiscal Year Research-status Report
Application of Machine Learning Technique to Phase Transition Research
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22K03472
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岡部 豊 東京都立大学, 理学研究科, 客員教授 (60125515)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 相転移 / 機械学習 / BKT転移 / イジングモデル / ポッツモデル / クロックモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は、「機械学習の手法を相転移研究に応用するとともに、相転移研究の概念的再構築を行う」ことにある。第一の研究として、既に提案してきた画像処理で成功を収めた機械学習の手法を相転移研究に適用する方法を、具体的な問題に展開した。我々の方法は、スピン配位ではなく長距離相関の配位をとらえることにより、その配位を学習させることにより、相の分類を行うことに特徴がある。 Berezinskii-Kosterlitz Thouless (BKT) 転移は、トポロジカルな相転移として興味ある対象で、2次元XYモデルが典型的な系である。その離散的なモデルであるクロックモデルでは、2つのBKT転移を起こすが、全く異なる系でも、6状態クロック・ユニバーサリティーを示すものがある。強磁性次近接相互作用を持つ、正方格子上の反強磁性3状態ポッツモデル、異方的強磁性次近接相互作用を持つ、三角格子上の反強磁性イジングモデルなどである。機械学習の応用として、トレーニングデータとして、6状態クロックモデルの相関配位を用い、テストデータとして、複雑なスピン系の相関配位を解析する研究を実施した。この研究により、全く異なる系に隠れた6状態クロック・ユニバーサリティーを直接的に検証することができた。また、モンテカルロ法により相関関数比を測定してBKT転移を精度よく調べる方法と、レベルスペクトル法による計算も合わせて実行して、総括的な研究として、論文を公表した。 機械学習の応用の第二の研究として、超解像と言われる、低解像度画像から高解像度画像を推定して作り上げる手法を、相転移と関連付け、くりこみ群変換の逆操作としての逆くりこみ群変換を実現する方法を提案してきた。本年度はこの手法をBKT転移の場合に拡張することを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したように、画像処理の機械学習の応用により、複雑なスピン系に隠れた6状態クロック・ユニバーサリティーを直接的に検証する研究を公表論文にまで仕上げた。ここ数年、6状態クロックモデルの研究が急増し、いろいろな新しい手法を用いた研究も提案されている。我々の研究をさらに拡張することを企画していて、研究進捗状況は順調に進展していると言える。 機械学習の応用として、低解像度画像から高解像度画像を推定して作り上げる手法を、相転移と関連付け、くりこみ群変換の逆操作としての逆くりこみ群変換を実現する方法を提案してきた。くりこみ群変換操作として、従来使われてきているKadanoff のブロックスピン変換に対応して、ブロッククラスター変換を提案してきたが、さらにBKT転移に拡張することを試みた。また、提案したブロッククラスター変換を3次元イジングモデルのくりこみ群解析に応用した。この研究は予備段階であり、次年度以降の重要な課題とする。 申請書では、異なるテーマの研究として、感染症伝搬の数理モデルの研究を実施して、"Mathematics"誌のEditor's Choice に選ばれ、"Most viewed paper”の上位となるなど好評を得ていることを記述した。現在その順位は、雑誌創刊以来13000程の論文の中の4位となっている。また、申請書提出後、本研究が開始する前に、Nature グループのScientific Reports誌に、"Spread of variants of epidemic disease based on the microscopic numerical simulations on networks"という論文を発表し、この論文も都立大学から報道発表された。スピン系の機械学習の研究と感染症伝搬の数理モデルの研究を関連付けることも企画している。
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Strategy for Future Research Activity |
機械学習の相転移研究への応用を、引き続き推進する。隠れた6状態クロック・ユニバーサリティーを直接的に検証する研究は、スピン系以外のモデルに議論を拡張する。6状態クロックモデルは、最近、多くの研究が発表され、テンソルくりこみ群などの新しい研究手法が応用されているので、我々の機械学習による研究との関連を検討中である。また、逆くりこみ群変換については、我々の論文を引用する形で新しい研究が報告されているので、その関連を検討中である。また、提案してきたブロッククラスター変換の応用も推進していく。 大きな課題として、これまで機械学習は教師あり学習の応用だったのが、教師なし学習の手法の相転移研究への展開を試みている。他グループのいくつかの提案があるが、新しいパラダイムを作るような研究はまだないと言えるので、基礎的な研究から開始している。 また、申請書を提出したときにはなかった新しい研究も推進していく計画である。平面を埋めつくす図形として、正三角形、正方形、正六角形などの周期的埋めつくしだけでなく、ノーベル物理学賞受賞のペンローズが提案した、2つのひし形による準周期的な埋めつくしが準結晶として知られていた。ところが、本年(2023年)3月に13の頂点から成るhat状の図形が1つの図形として平面を埋めつくすことが発表された。数学界の大発見として研究が進んでいるが、この新しい「格子」上の物理系は、新しい研究課題である。すでに、ペンローズ格子上のスピン系の相転移研究で研究実績があるので、新しい「hat状の格子」の上のスピン系の相転移の研究を開始していく。ペンローズ格子と異なる性質も指摘されているので、その上の物理系に現れる性質は興味ある研究対象である。
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Causes of Carryover |
本年度、オープンアクセスの論文発表を予定していた投稿論文が、担当編集委員が連絡をとれなくなるような事情が生じて、論文審査が大幅に遅れてしまった。そのため、次年度にオープンアクセスによる出版を計画している。
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Research Products
(1 results)