2023 Fiscal Year Research-status Report
多自由度を有する超伝導におけるギャップレス相の研究
Project/Area Number |
22K03478
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 伸吾 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (40779675)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 超伝導 / 多自由度 / トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は超伝導の現代的分類理論を基礎とし、電子の多自由度に由来する量子現象が超伝導物性に及ぼす影響を調べることを目的としている。本年度は、(1)副格子自由度を持つ超伝導体における表面状態の研究、(2)スピン1重項超伝導体における軌道自由度由来のトポロジーについて研究を行った。 (1)超伝導体が非自明なトポロジカル数(整数)を持つとき表面にマヨラナ準粒子が出現する。では超伝導体が非自明な幾何学的位相(実数)を持つとき表面に異常は現れるだろうか?我々はこの問に対し、幾何学的位相に由来する表面状態が存在することを明らかにした。この表面状態はマヨラナ準粒子や通常のアンドレーエフ束縛状態とは異なる性質を持っている。BCSチャージと呼ばれる量が空間的に振動した構造を持つため、我々はこの表面状態を「振動電荷アンドレーエフ束縛状態(OCABS)」と名付けた。OCABSは副格子自由度を持つ超伝導体において現れ、表面において電子あるいはホールの状態密度のみを持つ。この性質よりアンドレーエフ反射が起こらず、トンネルコンダクタンスでは検出されないなど際立った性質を持つことも明らかにした。 (2)スピン1重項s波超伝導体はトポロジカルに自明である。本研究では、軌道自由度に対する非自明な縮退が存在するとき、スピン1重項s波超伝導体であってもトポロジカルに非自明になり得ることを明らかにした。このトポロジカル相は従来の分類理論の枠外にあり、新奇なトポロジカル相である。また、本理論を鉄系超伝導体に応用できることも明らかにした。本研究成果は多自由度とトポロジーの協奏による新奇トポロジカル超伝導体が存在することを示し、今後のトポロジカル超伝導体の探索に新しい方向性をもたらすと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたように、多自由度を有する超伝導体における表面状態の研究を進め論文にまとめることができた。また、多自由度に由来する新奇トポロジカル超伝導相の発見など新領域を開拓することもできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では以下の研究課題に取り組みたい。 (1)多自由度とトポロジーによる新奇トポロジカル相に関する研究 昨年度の研究において軌道自由度による新奇トポロジカル相が存在することを明らかにした。来年度は、この研究に基づいて新奇トポロジカル相の物性を開拓していきたい。 (2)多自由度超伝導体と幾何学的位相の関係に関する研究 多自由度を有する超伝導体では従来の超伝導理論の範疇を超えた新奇量子現象が発現する。来年度は副格子自由度を持つ超伝導体におけるトポロジカル物性や量子幾何効果による新奇物性の開拓を行いたい。
|
Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、コロナウイルスやインフルエンザ感染の予防の観点から国内外の出張の回数を制限したため、次年度使用額が生じた。次年度も引き続きウイルスのまん延防止を考慮し出張を行いたいと考えている。予算は、国際会議への参加や研究滞在のための出張旅費、研究資料購入費、論文出版費に使用する予定である。
|
Research Products
(14 results)