2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K03496
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
柴田 康介 学習院大学, 理学部, 助教 (90735440)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子非破壊測定 / ボースアインシュタイン凝縮体 / スピンショットノイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ルビジウム原子のボースアインシュタイン凝縮体のスピンを連続的に量子非破壊測定する。原子集団を通過したプローブ光の偏光回転角を測定することで、スピンの量子非破壊測定が実現される。この偏光回転測定によるスピン測定の信号対雑音比は、原理的にプローブ光の光ショット雑音で制約される。一方で、ボースアインシュタイン凝縮体のスピン測定においては、プローブ光による原子集団の加熱およびスピン状態の変化を十分に小さくする必要があり、プローブ光を強めることができない。この理由によって、スピン測定の精度が光ショット雑音によって制約されていた。この制約を克服するため、スピンによる偏光回転信号の増大を目指し、ボースアインシュタイン凝縮体の形状変更技術の開発に取り組んだ。音響光学素子を用いてボースアインシュタイン凝縮体を捕獲するトラップ光のプローブ進行方向に沿ったサイズを拡大した。拡大されたトラップ光中にボースアインシュタイン凝縮体を準備することにも成功した。さらに、複数のボースアインシュタイン凝縮体の並列測定を可能とすべく、波長532nmの斥力光ポテンシャルを導入し、ボースアインシュタイン凝縮体を分割できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボースアインシュタイン凝縮体のスピンの量子非破壊測定にあたっては、プローブ光のもたらす好ましくないスピン変化とプローブ光によるフォトンショット雑音とのトレードオフが避けられない。本年度に開発した原子集団の整形技術は、測定の量子非破壊性を高めるために重要なものであったと考える。また、本研究課題の目標の1つは、相互作用する複数の系の連続的量子非破壊測定であり、相互作用性のコントロールに使える斥力ポテンシャルの導入に成功したことで、目標の実現に近づいたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
測定によって条件づけられた非古典的状態が、長時間にわたって維持されるのかを第一に検証する。空間的なエンタングルメントが形成される可能性にも着目する。また、連続的な量子非破壊測定を利用し、環境雑音の下でも古典限界を上回る精度でスピンを測定できる可能性がある。ただし、どの程度古典限界を超えられるかは、雑音の特性によるため、実際のBECにおいて、連続非破壊測定によって環境雑音に対して堅牢なスピン空間分布を測定可能か検証する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:年度前半にボースアインシュタイン凝縮体生成装置の復旧作業をしたことにより、予定していた実験の一部を見送ったため。使用計画:次年度使用額は、新たな光学系構築用の光学素子および機械部品の購入に使用する計画である。
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