2022 Fiscal Year Research-status Report
放射光X線散乱による遷移金属酸化物に対する時間分解励起スペクトルの理論
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22K03500
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
筒井 健二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 上席研究員 (80291011)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 反強磁性モット絶縁体 / 時間分解ラマン散乱 / 時間分解共鳴非弾性X線散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
時間分解ラマン散乱や時間分解共鳴非弾性X線散乱等により超高速スピン・ダイナミクスの情報が得られるようになってきた.反強磁性モット絶縁体に対してもこれらポンプ・プローブ法が適用され,それぞれ2マグノン励起やスピン励起に関する興味深い現象,例えば光照射後のスペクトル強度変化などが観測され始めている. 本研究では,二次元正方格子モット絶縁体における光励起非平衡状態での2マグノン励起スペクトルおよびスピン励起スペクトルをハバード模型の有限サイズ系に対する数値的厳密対角化法に基づく大規模数値計算より調べた.その結果2マグノン励起スペクトルおよびスピン励起スペクトルどちらも,ポンプ光が吸収スペクトルの吸収端に対応するエネルギーの時に,平衡状態での励起よりも低いエネルギーの励起が現れること,そしてスピン励起ではそれらが異方的な励起となっていることを見いだした. このような特徴を持った光励起非平衡状態でのスペクトルの起源を探るために,ポンプ光照射後の波動関数を正方格子の対称性表現により分類することによって励起スペクトルを調べた.その結果,1光子吸収状態に対応するE表現の状態が低エネルギー励起に寄与していることが明らかとなった.そしてその状態の中でも,ホロン・ダブロン対のエキシトン的な状態である1光子吸収端の状態がこの低エネルギーの励起スペクトル強度の増加に重要な役割を果たしていることが分かった.この成果は論文として発表し,国内外の会議で招待講演などで報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な時間分解励起スペクトルの計算が可能になり研究目的達成に向けて順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
時間分解共鳴非弾性X線散乱や時間分解ラマン散乱等を念頭にして光励起状態での励起スペクトルの特徴を引き続き明らかにしていく.
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Causes of Carryover |
計算機購入費が計画よりも安くなったため.成果発表のための旅費および論文掲載料に使用する.
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Research Products
(6 results)