2023 Fiscal Year Research-status Report
新しい炭素ネットワーク物質の高圧合成による高温超伝導探索
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22K03506
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中野 岳仁 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50362611)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高圧合成 / 炭素 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高圧合成法により新しい炭素系ネットワーク物質を合成し,キャリア密度の制御法も開発して,常圧下で存在可能な100 K級の超伝導体を開発することを目的としている.令和5年度は以下のように研究を進めた. 高圧高温合成の出発物質としてアルカリ金属ドープフラーレンC60を用いることにより,キャリア密度の制御を試みてきた.令和4年度にはNaxC60 (x = 1~3), K3C60, RbC60について高圧高温処理を行ったが,本年度はこれまでに実験を行っていない化学組成の物質を用いて,高圧高温処理の条件とプロセスも変えて実験を実施した.具体的にはLiC60とNaC60をまず常圧で合成し,大型放射光施設SPring-8 BL04B1において高温高圧下でのX線粉末回折の「その場観察」実験を0 ~ 15 GPa,室温 ~ 600度の範囲で実施し,新しい結晶相の探索を行った.その結果,NaC60においては,常温常圧では立方晶であるが,高温高圧処理後は格子定数が大幅に縮まった三方晶の結晶となることを初めて見出した.またこの結晶は常圧下でも安定であることが分かった. この成果について指導学生が国際シンポジウムで発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように,本研究の手法を用いて初めて常圧下でも安定な新しい結晶の合成に成功した.少なくともNaC60においては高圧高温処理の条件とプロセスが分かったので,さらに今後多くの結晶を合成することで,物性測定にも展開が可能である.このため,進捗は順調であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の方針を軸として研究を進める. 高圧合成で一度に得られる物質の量は微小である.上述の,令和5年度に発見したNaC60の新たな結晶相について,物性測定に必要な分量の高圧合成を進める.磁化率,電子スピン共鳴,電気伝導度,比熱,近赤外-可視-紫外分光,ラマン分光などの物性測定を行い,この新物質の電子状態,フォノン状態を明らかにする. 令和4年度に発見している,K3C60の新たな高圧相(常圧では安定ではない)について,高圧下で物性測定を行うことを試み,この相の電子状態を調べる. これまでに行っていない化学組成の出発物質を用いて,さらに新たな物質の探索を進める. 主要な成果について,学会発表や学術論文誌への投稿を行う.
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Causes of Carryover |
次年度使用額の10,841円は,当該年度の実支出額である1,847,180円の0.6%に過ぎないため,ほとんど計画通りに使用したと言える.2024年度の高圧合成装置の消耗品購入に使用する計画である.
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