2022 Fiscal Year Research-status Report
Relationship between the effect of interlayer materials and surface electronic states on Layered nitride superconductors observed by STM/S
Project/Area Number |
22K03514
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉本 暁 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 助教 (90432690)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 層状窒化ハロゲン化物超伝導体 / STM/STS / 超伝導ギャップ / ナノ不均一性 / ストライプ構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、非従来型超伝導機構を持つとされている層状窒化ハロゲン化物超伝導体の層間物質の状態と超伝導性との関連について、走査トンネル顕微鏡STM/STSを駆使してナノスケールやそれより高精細な原子スケールの電子状態密度を計測することで、新たな知見を得る研究である。初年度である2022年度は、その第一歩としてアルファ型では最も超伝導性の高いNa-TiNClと超伝導性のない半導体母物質pri-TiNClの双方のSTM/STS観測を行い、超伝導ギャップ(超伝導の一番の特徴的エネルギー)及び電子状態密度変調(電子のさざなみ)の原子スケール分布取得に成功し、その起源について新たな重要な知見を得た。 超伝導性を示すNa-TiNClでは電子状態密度スペクトル上のピークであるギャップ値Dは、D=8.7±4.2 meVとなり、以前の結果と矛盾しないナノ不均一性を持つギャップ分布を得た。一方で、非超伝導母物質pri-TiNClでは明瞭なギャップ構造のピークを示さず、従来から観測されていたギャップは超伝導由来のギャップであることを改めて示した。ただ、pri-TiNClにおいては、わずかながら局所的にギャップピークを示すスペクトルが存在し、表面に現れた超伝導の前駆的な現象もみられ、今後に向けての興味深い結果も得ている。 一方、電子のさざなみ(ストライプ)模様を示す現象である、電子状態密度変調構造についても新たに高精度に観測され、特に非超伝導である母物質pri-TiNClにおいて、|E|< 100 meVの範囲でエネルギー非依存のスタティックな4.8xb0 ストライプ構造を初めて観測した。これによりこの種の構造は、ドープ量や層間物質種類によらず、かつ非超伝導由来であることを解明した。これらの結果はウクライナの低温物理学専門誌 Low Temperature Physicsの特集号に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
電子状態変調(ストライプ)構造の起源については、様々な挿入層間物質を変化させることで、その有無を精査する予定であったが、層間物質なしでも、ストライプ構造の存在を示すことができたため、少なくとも層間物質種やその量が起源ではないことを明確に示せたので、予想以上に大きな進展を得たといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
電子状態変調(ストライプ)構造の起源については、様々な挿入層間物質を変化させることで、その有無を精査する予定であったが、層間物質なしでも、ストライプ構造の存在を示すことができたため、少なくとも層間物質種やその量が起源ではないことを明確に示せたことから大きな進展を得た。今後は、層間物質種を変化させたときのストライプ構造の質的な変化を、層間長さの変化としてとらえ、系統的に探る予定である。 一方、超伝導ギャップについては、まだギャップの大きさという量的な変化の系統的観測ができておらず、その知見が得られていないことから、特にNa, K以外の異なる層間物質種の超伝導試料におけるSTM/STS観測を特に進めていく方針である。
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Causes of Carryover |
使用額の差については、当該年度は、当初の計画よりも予想外に解明につながる結果が得られたことで観測試料種類が少なく済んだことに伴い、消耗品の使用頻度がある程度少額となったためである。今後多種類の試料の観測によりSTM/STS観測の頻度が増えることが見込まれ、その差額分が必要となる。
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