2022 Fiscal Year Research-status Report
ハーフメタル型ホイスラー合金の電子構造制御機構の解明
Project/Area Number |
22K03527
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 秀紀 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (00397746)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新分光法開発 / スピン偏極電子状態 / ハーフメタル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スピントロニクス材料の有力な候補であるハーフメタル型Co及びMn基フルホイスラー合金に対し、電子構造と磁気秩序構造の詳細を放射光分光測定により解明することを目的としている。初年度において特に高エネルギー光電子分光、及びX線吸収磁気円二色性測定(XAS-MCD)に焦点を当て研究を推進した。
フェリ磁性体Mn2VAlに対する軟X線光電子分光により、Fermi準位近傍の電子構造はMn 3d成分が支配的であることを示し (学会発表1件)、角度分解光電子分光(ARPES)により明瞭なバンド分散およびフェルミ面を得ることに成功した。また、磁場中における硬X線光電子分光が測定機構を整備し、Co2MnSi及びMn2VAlの遷移金属(TM)2p内殻準位に明瞭な磁気円二色性(HAXPES-MCD)を見出した(学会発表3件、うち国際会議招待講演1件)。このMCD信号は磁性を司るTM 3d軌道の有効磁場による2p内殻準位のゼーマン分裂とスピン偏極に由来する。これまで申請者等は、2p内殻のスピン偏極を利用したスピン偏極電子構造観測手法として、磁場中共鳴非弾性X線散乱(RIXS-MCD)を開発・提案してきたが(国際会議招待講演1件、解説記事1件)、本研究の結果はRIXS―MCDの原理を実験的に裏付ける重要な成果といえる。
以上に加え、ハーフメタル 型ホイスラー合金Co2MnSiの2p吸収スペクトルに現れる広域X線吸収微細構造(EXAFS)に磁気円二色性(MEXAFS)を見出し、分光理論グループとの共同研究により多重散乱理論を用いた解析手法の開発を推進した(学会発表2件)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予期せぬ放射光施設のビームラインの光源系の不調により、予定していた軟X線ARPES分光実験とMEXAFS実験が実施できなかったため、計画に若干の遅れが生じている。軟X線角度分解光電子分光(SXARPES)装置を有するビームラインについては、昨年度中に新しい光源に更新されたため、現在は利用実験を遂行できる状態にある。このため、今年度においてSXARPESを重点的に実施する予定である。なお、研究代表者らは新しい光源系に更新したビームラインにおけるSXARPES装置の性能評価実験の一部に参画した。その際に新しい光学系を利用した試験実験に最適な系として、Au-Ga-Ce近似結晶等に対する角度積分光電子分光測定を実施し、多数の学会発表に繋がる成果を得た。一方で、MEXAFS実験を予定していたビームラインについては、残念ながら現時点では復旧の目処が経っていない。このため、今後は既に測定済みの高精度データを用いた解析手法の高度化を主眼に置いた研究計画に変更する予定である。
相補的研究として計画していた磁場中HAXPESについては、HAXPES-MCDの測定に成功する等、大きな進展があった。さらに、研究を推進するために必要なHAXPES装置の高度化に際し、ホイスラー合金系に加え、量子臨界現象を示す強相関希土類化合物や、特殊な結晶構造を有する希土類系近似結晶の実験においても研究が展開し、共同研究として論文発表(2件)およぼ国際会議等で発表を行った。
以上を総合すると、当初の研究計画に対しては若干の遅れがあるものの、概ね順調に推移していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究展開として、ハーフメタル型Co及びMn基ホイスラー合金(Co 2MnSi,Mn2VAl)のバンド構造とフェルミ面の3次元精密測定を推進するべく、SXARPES実験を遂行する。また、磁場中HAXPESの高度化をさらに推進し、光源の最適化、自動測定機構を開発し、微小MCD信号の高精度測定手法の開発を推進する。今年度の研究において、2p内殻ホールのスピン偏極が実証されたため、磁場中RIXSの研究を推進する。また、硬X線領域のRIXS実験への展開を計画している。MEXAFS測定については分光理論グループとの共同研究を推進し、解析手法の高度化を推進する。
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Causes of Carryover |
予定していた放射光施設における実験が、予期せぬ実験装置の不調により実施できなくなったため、当初計画していた出張実験の旅費、及び施設利用料に未使用分が生じたことにより次年度使用額が生じた。
繰り越した助成金は、本年度参加を予定している国際会議の参加費及び旅費に充当する。
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Remarks |
RIXS-MCDに関する解説記事 H. Fujiwara, and R. Y. Umetsu, SPring-8 Research Frontier 2021, 52 (2022)
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Research Products
(30 results)
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[Journal Article] Anisotropic magnetization and electronic structure of the first-order ferrimagnet ErCo2 studied by polarization dependent hard X-ray photoemission spectroscopy2023
Author(s)
A. A. Abozeed, D. I. Gorbunov, T. Kadono, Y. Kanai-Nakata, K. Yamagami, H. Fujiwara, A. Sekiyama, A. Higashiya, A. Yamasaki, K. Tamasaku, M. Yabashi, T. Ishikawa, H. Wada, A. V. Andreev, S. Imada
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Journal Title
Physica B: Condensed Matter
Volume: 649
Pages: 414465~414465
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] 強磁性ホイスラー合金 Co2MnSiにおける遷移金属L端広域X線吸 収微細構造の磁気円二色性2023
Author(s)
藤原秀紀, 向後純也, 笠原理加, 西岡拓真, 藤本直央, 永井浩大, 関山明, 角田一樹, 竹田幸治, 斎藤祐児, 梅津理恵, 二木かおり
Organizer
日本物理学会 2023年春季大会
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[Presentation] 磁場中硬X線光電子分光によるハーフメタル型ホイスラー合金Mn2VAlの内殻光電子磁気円二色性2023
Author(s)
堤美和, 藤原秀紀, 野末悟郎, 尾瀬朱音, 榎本彬人, 濵本諭, 今田真, 東谷篤志, 山崎篤志, 玉作賢治, 矢橋牧名, 石川哲也, 梅津理恵, 関山明
Organizer
日本物理学会 2023年春季大会
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[Presentation] ハーフメタル型ホイスラー合金Co2MnSiにおけるMn L2,3端広域X線吸収微細構造の磁気円二色性2023
Author(s)
藤原秀紀, 向後純也, 笠原理加, 西岡拓真, 藤本直央, 永井浩大, 関山明, 角田一樹, 竹田幸治, 斎藤祐児, 梅津理恵, 二木かおり
Organizer
第36回日本放射光学会年会・放射光科学合 同シンポジウム
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[Presentation] ハーフメタル型ホイスラー合金Mn2VAlの磁場中硬X線光電子分光2023
Author(s)
堤美和, 藤原秀紀, 野末悟郎, 尾瀬朱音, 榎本彬人, 濵本諭, 今田真, 東谷篤志, 山崎篤志, 玉作賢治, 梅津理恵, 関山明
Organizer
第36回日本放射光学会年会・放射光科学合 同シンポジウム
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[Presentation] 強磁性体Au-Al-Gd近似結晶に対する内殻・価電子帯光電子分光2023
Author(s)
野末悟郎, 尾瀬朱音, 堤美和, 藤原秀紀, 木須孝幸, 濵本諭, 玉作賢治, 矢橋牧名, 石川哲也, 東谷篤志, 山崎篤志, 今田真, Farid Labib, 鈴木慎太郎, 田村隆治, 関山明
Organizer
日本物理学会 2023年春季大会
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[Presentation] 共鳴硬X線光電子分光による価数揺動物質alpha-YbAl1-xFexB4の量子臨界点近傍の電子構造研究2023
Author(s)
久我健太郎, 西岡拓真, 姫野良介, 藤原秀紀, 野末悟郎, 尾瀬朱音, 鳥井優杜, 濱本諭, 笠原理加, 西本幸平, 木須孝幸, 関山明, 保井晃, 雀部矩正, 河村直己, 池永英司, 水牧仁一朗, 筒井智嗣, 三村功次郎, 松波雅治, 竹内恒博
Organizer
日本物理学会 2023年春季大会
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[Presentation] 価数揺動系YbNi2Ge2の遍歴・局在4f電子状態温度変化の内殻光電子線二色性による観測2023
Author(s)
尾瀬朱音, 濵本諭, 樫内利幸, 野末悟郎, 鳥井 優杜, 榎本彬人, 堤美和, 藤原秀紀, 中田惟奈, 今田真, 山崎篤志, 東谷篤志, 玉作賢治, 木須孝幸, 矢橋牧名, 石川哲也, 三宅厚志, 田中新, 海老原孝雄, 関山明
Organizer
日本物理学会 2023年春季大会
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[Presentation] フェリ磁性GdFeCoにおける単純/蓄積的な光誘起偏光依存磁化反転2023
Author(s)
大河内拓雄,高橋龍之介, 藤原秀紀, 高橋宏和, Roman Adam, Umut Parlak, 山本航平, 大沢仁志, 小嗣真人, 塚本新, 和達大樹, 関山明, Claus M. Schneider, 角田匡清, 菅滋正, 木下豊彦
Organizer
第70回応用物理学会春季学術講演会
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[Presentation] 硬X線内殻・軟X線3d-4f共鳴光電子分光による強相関Au-Ga-CeおよびCd-Ce近似結晶の電子状態研究2023
Author(s)
野末悟郎, 堤美和, 尾瀬朱音, 藤原秀紀, 木須孝幸, 濵本諭, 大浦正樹, 玉作賢治, 矢橋牧名, 石川哲也, 東谷篤志, 山崎篤志, 今田真, Farid Labib, 元売明瑞紗, 鈴木慎太郎, 田村隆治, 関山明
Organizer
第36回日本放射光学会年会・放射光科学合 同シンポジウム
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[Presentation] 角度分解光電子分光を用いたNiMnSbの電子状態研究2023
Author(s)
臼井大智, 野末悟郎, 尾瀬朱音, 堤美和, 藤原秀紀, 濵本諭, 中田惟奈, 木須孝幸, 関山明, 大浦正樹, 岩瀬文達, 福原忠, 増渕伸一, 今田真
Organizer
第36回日本放射光学会年会・放射光科学合 同シンポジウム
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[Presentation] 共鳴硬X線光電子分光を用いた価数搖動系物質CeTIn5 (T=Co, Rh, Ir)の電子構造研究2023
Author(s)
西岡拓真, 藤原秀紀, 姫野良介, 笠原理加, 野末悟郎, 尾瀬朱音, 濱本諭, 久我健太郎, 保井晃, 雀部矩正, 河村直己, 水牧仁一朗, 筒井智嗣, 池永英司, 三村功次郎, 関山明
Organizer
第36回日本放射光学会年会・放射光科学合 同シンポジウム
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[Presentation] 硬X線光電子分光によるCo2NbSnの電子状態研究2023
Author(s)
島田祐希, 臼井大智, 宮崎徹也, Chen Yuchen, 浅井祥太, 島本将徳, 野末悟郎, 橋爪快人, 尾瀬朱音, 堤美和, 宮崎栞司, 村上友梨, 田中菜摘, 中田惟奈, 藤原秀紀, 濱本諭, 東谷篤志, 山崎篤志, 関山明, 玉作賢治, 矢橋牧名, 石川哲也, 許皛, 貝沼亮介, 鹿又武, 今田真
Organizer
第36回日本放射光学会年会・放射光科学合 同シンポジウム
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[Presentation] 価数揺動物質YbNi2Ge2の内殻硬X線光電子線二色性による遍歴・局在4f電子状態温度変化の観測2023
Author(s)
尾瀬朱音, 濵本諭, 樫内利幸, 野末悟郎, 藤原秀紀, 中田惟奈, 今田真, 山崎篤志, 東谷篤志, 玉作賢治, 木須孝幸, 矢橋牧名, 石川哲也, 田中新, 海老原孝雄, 関山明
Organizer
第36回日本放射光学会年会・放射光科学合 同シンポジウム
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[Presentation] 内殻・価電子帯光電子分光による強磁性体Au-Al-Gd近似結晶の電子状態研究2023
Author(s)
野末悟郎, 尾瀬朱音, 堤美和, 榎本彬人, 藤原秀紀, 木須孝幸, 濵本諭, 玉作賢治, 矢橋牧名, 石川哲也, 東谷篤志, 山崎篤志, 今田真, Farid Labib, 鈴木慎太郎, 田村隆治, 関山明
Organizer
第27回準結晶研究会
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[Presentation] ハーフメタル型ホイスラー合金Mn2VAlのMn 2p-3d共鳴光電子分光2022
Author(s)
堤美和, 藤原秀紀, 野末悟郎, 濵本諭, 臼井大智, 今田真, 久我健太郎, 木須孝幸, 大浦正樹, 梅津理恵, 関山明
Organizer
日本物理学会 2022年秋季大会
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[Presentation] 光電子線二色性による強相関Cd-Ce近似結晶のバルク電子構造2022
Author(s)
野末悟郎, 尾瀬朱音, 堤美和, 橋爪快人, 藤原秀紀, 木須孝幸, 濵本諭, 玉作賢治, 矢橋牧名, 石川哲也, 山崎篤志, 今田真, Farid Labib, 元売明瑞紗, 鈴木慎太郎, 田村隆治, 関山明
Organizer
日本物理学会 2022年秋季大会
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[Presentation] YbNi2Ge2の内殻光電子線二色性による遍歴・局在4f電子状態温度変化の観測2022
Author(s)
尾瀬朱音, 濵本諭, 樫内利幸, 野末悟郎, 藤原秀紀, 中田惟奈, 今田真, 山崎篤志, 東谷篤志, 玉作賢治, 木須孝幸, 矢橋牧名, 石川哲也, 田中新, 海老原孝雄, 関山明
Organizer
日本物理学会 2022年秋季大会
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[Presentation] Hard and Soft X-ray Photoemission Study of the Au-Ga-Ce and Cd-Ce Quasicrystalline Approximants2022
Author(s)
Goro Nozue, Akane Ose, Miwa Tsutsumi, Hayato Hashizume, Hidenori Fujiwara, Takayuki Kiss, Satoru Hamamoto, Masaki Oura, Kenji Tamasaku, Makina Yabashi, Tetsuya Ishikawa, Atsushi Higashiya, Atsushi Yamasaki, Shin Imada, Azusa Motouri, Farid Labib, Shintaro Suzuki, Ryuji Tamura, Akira Sekiyama
Organizer
Aperiodic
Int'l Joint Research
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[Presentation] Probing Electronic States of the Au-Ga-Ce and Cd-Ce Quasicrystalline Approximants by Hard and Soft X-ray Photoemission Spectroscopy2022
Author(s)
Goro Nozue, Akane Ose, Miwa Tsutsumi, Hayato Hashizume, Hidenori Fujiwara, Takayuki Kiss, Satoru Hamamoto, Masaki Oura, Kenji Tamasaku, Makina Yabashi, Tetsuya Ishikawa, Atsushi Higashiya, Atsushi Yamasaki, Shin Imada, Azusa Motouri, Farid Labib, Shintaro Suzuki, Ryuji Tamura, Akira Sekiyama
Organizer
LT29
Int'l Joint Research
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[Presentation] Bulk Electronic State of Au-Ga-Ce and Cd-Ce Quasicrystalline Approximants Probed by Hard X-ray Photoemission Spectroscopy2022
Author(s)
Goro Nozue, Akane Ose, Hayato Hashizume, Hidenori Fujiwara, Takayuki Kiss, Satoru Hamamoto, Kenji Tamasaku, Makina Yabashi, Tetsuya Ishikawa, Atsushi Higashiya, Atsushi Yamasaki, Shin Imada, Azusa Motouri, Farid Labib, Shintaro Suzuki, Ryuji Tamura, Akira Sekiyama
Organizer
The 9th International Conference on hard x-ray photoelectron spectroscopy [HAXPES2022]
Int'l Joint Research
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[Presentation] Resonant hard X-ray photoemission on valence fluctuating system α-Yb(Al1-xFex)B42022
Author(s)
T. H. Nishioka, K. Kuga, H. Fujiwara, R. Himeno, R. Kasahara, S. Hamamoto, K. Nishimoto, T. Kiss, A. Yasui, N. Sasabe, N. Kawamura, E. Ikenaga, M. Mizumaki, S. Tsutsui, K. Mimura, A. Sekiyama
Organizer
The 9th International Conference on hard x-ray photoelectron spectroscopy [HAXPES2022]
Int'l Joint Research
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[Presentation] In-Plane Orientation of the 4f-Orbital Distribution in YbRh2Si2 Probed by Linear Dichroism in Core-Level HAXPES2022
Author(s)
Akane Ose, Satoru Hamamoto, Toshiyuki Kashiuchi, Goro Nozue, Hidenori Fujiwara, Yuina Kanai-Nakata, Shin Imada, Atsushi Yamasaki, Atsushi Higashiya, Kenji Tamasaku, Takayuki Kiss, Makina Yabashi, Tetsuya Ishikawa, Arata Tanaka, Takao Ebihara, and Akira Sekiyama
Organizer
The 9th International Conference on hard x-ray photoelectron spectroscopy [HAXPES2022]
Int'l Joint Research
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