2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K03530
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
東谷 誠二 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 教授 (70304368)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | カイラル超伝導 / カイラルエッジ状態 / アンドレーエフ束縛状態 / 表面散乱効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイラル超伝導体の表面には,カイラルエッジ状態(CE状態)と呼ばれる表面アンドレーエフ束縛状態が存在する.また,カイラル超伝導は自発的に時間反転対称性を破る非従来型超伝導であり,その表面(エッジ)には自発電流が誘起されることが知られている.CE状態はこの自発エッジ電流の担い手として注目されてきた.しかしながら,カイラル超伝導の表面状態に関する従来の研究の多くは鏡面的な表面を仮定する理想化された理論モデルに基づいており,現実の物質では不可避な表面の乱れ(ラフネス)による散漫散乱の効果の理解は進んでいない.長い歴史をもつ超流動ヘリウム3の研究によって明らかにされてきたように,超伝導・超流動状態は一般に散漫散乱の影響を強く受ける. 超流動ヘリウム3では,p波対称性を有するカイラル超流動が実現する.同様な対称性をもつカイラルp波超伝導の候補物質も対象とした従来の研究によって,カイラルp波超伝導・超流動の表面状態密度には散漫散乱を反映した特徴的なサブギャップ構造が現れることが指摘されている.本研究では,高次(非p波)カイラル超伝導のCE状態に対する散漫散乱の効果を明らかにすることを目的に,カイラル超伝導の表面状態密度を準古典グリーン関数理論に基づいて解析した.その結果,高次カイラル超伝導にはカイラルp波に見られるサブギャップ構造が現れないことが明らかになった.このようなp波と非p波カイラル超伝導における散漫散乱効果の差異は,後者のCE状態には,前者とは異なり,複数のモードが存在し,それらのCEモード間の散漫散乱が表面状態密度の顕著なブロードニングを引き起こすことに起因する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の一つとして挙げていた,高次カイラル超伝導の表面状態密度に対する散漫散乱効果の解析に着手し,上記のような新たな知見を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では,摂動論的手法を用いて表面での散漫散乱効果を解析した.これは鏡面反射確率に対して散漫散乱確率が十分に小さい場合を考えていることに相当する.今後は,散漫散乱が支配的になるような状況の解析を進めていく.
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Causes of Carryover |
国内・国際会議にオンライン参加したため,旅費を節約できた.この未使用経費は次年度の設備備品費及び消耗品費に加算して使用する予定である.
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Research Products
(1 results)