2023 Fiscal Year Research-status Report
Theory of emergent inductor and capacitor based on topological materials science
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22K03538
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
荒木 康史 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (10757131)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / スピントロニクス / 磁性体 / 創発インダクタ / スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はトポロジカル電磁応答に由来した創発インダクタンスの理論構築を進めると共に、創発インダクタンスの実験測定を目指し、実験研究者と共同研究を行った。 基礎理論として、前年度から引き続き行っていた「トポロジカル場の理論」に基づく創発インダクタンスの定式化を完成させ、論文として発表した。この基礎理論はあらゆる種類のトポロジカル物質に適用できる理論の枠組みを提供するものであり、具体的な物質への実装に向け実験研究者と議論を重ねている。 また、創発インダクタンスの素過程であるスピン起電力について、磁性ワイル半金属中で磁壁がある場合における理論計算を行った。ワイル半金属に特有の「カイラルゲージ場」の効果により、スピン起電力は従来の数百倍という極めて大きな効果が得られることを示した。この研究成果は日本物理学会で発表を行い、現在論文を投稿中である。 実験研究者との共同研究として、創発インダクタの構成要素として必要となる、スピン軌道相互作用に由来した磁化ダイナミクス(スピン軌道トルク)の効果を検証した。膜厚勾配のあるトポロジカル絶縁体薄膜を使うことにより、対称性の低下に起因して従来理論では予測されていなかった方向のスピン成分が実現されることを、実験結果と対称性に基づく理論解析の比較により実証した。この成果については日本物理学会で発表を行い、現在論文を投稿中である。 また、磁気構造の制御に伴って変化する量子構造「量子計量」の効果について、モデル計算を行い、実験測定との対照により検証した。この成果は東北大学の実験グループと共同で論文にまとめ、Nature Physics誌に掲載された(2024年4月掲載)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は本研究計画の2年目として、創発インダクタンスの基礎理論を完成させ、その実験による実証に向け具体的な測定系を想定した計算を行う予定であった。基礎理論については論文として公開され、ワイル半金属におけるモデル計算を行った他、実験グループとの共同研究も複数進行している。そのため、おおむね研究計画通り順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、以下の方策で研究を行うことを計画している。 (1) 具体的な物質系でのインダクタンス測定に先立ち、物質が持ちうるインダクタンスの成分について、対称性に基づいて定式化を行う。金属と磁性体薄膜のヘテロ構造を想定し、最初に素過程として許容されるスピン軌道トルクとスピン起電力について、点群(または磁気点群)による分類を行う。これを用いて、創発インダクタンスで許容されるテンソル成分を求める。 (2) 特に磁性ワイル半金属で現れる電流誘起のスピン移行トルクについて、電子系のトポロジーの効果を取り込んだ定式化を行う。従来の理論では考えられていなかった、ワイル点近傍でのスピン-運動量ロッキング構造が支配的でない場合に理論を拡張する。これにより、様々な磁性ワイル半金属物質においてトルク効率を試算し、磁壁ダイナミクスにより現れる創発インダクタンスの値を予測する。 (3) 引き続き実験研究者と協力し、磁化ダイナミクス過程における電子系トポロジー効果の寄与について検証を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外特許出願費用については、別予算による支出となった。また、航空費・宿泊費の値上がりにより、当初予定していた海外国際会議参加の予定をキャンセルし、国内学会・会議参加へと振り替えた。以上により、本年度は約35万円の未使用額が生じた。次年度は国内学会や研究打合せのための出張旅費の他、計算・事務作業用PCの購入のため使用予定である。
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