2023 Fiscal Year Research-status Report
メカノクロミックポリマーを用いたバイオセンサの感度向上
Project/Area Number |
22K03544
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉原 加織 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60740800)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | メカノクロミックポリマー / 摩擦力顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリジアセチレンは、バイオセンシングによく用いられるメカノクロミック材料である。pH依存性や塩濃度依存性など、刺激により色を変化させるその特性は、脂質ポリマーの頭基同士の相互作用の影響を強く受けることが以前から知られていたが、そのナノスケールでの影響は未解明であった。本研究では、ナノ摩擦力顕微鏡と蛍光顕微鏡を組み合わせて、ナノスケールでのポリジアセチレンの力感受性に及ぼすpHとイオン強度の影響を調べた。その結果、pHを5.7から8.2に上昇させると、力感受性が8倍向上することがわかった。また、NaCl濃度を10 mMから200 mMに上げると、PDAの力感受性が5倍向上した。これらの結果は、ナノスケールにおけるPDAの力感受性は、pHやイオンによってあらかじめ刺激する(pre-stimulation)ことによって簡便に向上させることができることを示唆している(Anal. Chem. 2023)。 次に、本研究ではポリジアセチレンに「ゲスト分子」を入れた時に、その混合物がメカノクロミズムに与える影響をナノスケールで調べた。蛍光顕微鏡と定量的摩擦力顕微鏡を組み合わせることで、ゲスト有機アミンを含むPDA層状複合体のナノスケールでの力感受性を測定した。ノニルアミンと1-アミノデカンを介在させると、10,12-ペンタコサジエン酸の感度がそれぞれ127%と111%増加するのに対し、n-トリデカイルアミンとステアリルアミンを加えると77%と86%減少する。このナノスケールでの力感受性は、サーモクロミック温度およびフィルムのヤング率と逆相関しており、より柔らかいフィルムほど力感受性と熱感受性の両方が高いことが示唆される。 以上のようにポリジアセチレンが環境によって力感度をどのように変化させるのかを調べる基礎研究を行なってきた。様々な身の回りの力を検出するセンサ開発に応用する意義がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記述した実験1ー4のうち、3までは終了した。博士の学生1人とポスドク1人によってこれらの実験を完了した。実験については大きな問題もなく進み、数本の論文を出版したが、その中でも以下の二つが本研究の鍵となる成果である。 Dual nano-friction force microscopy/fluorescence microscopy imaging reveals the enhanced force sensitivity of polydiacetylene by pH and NaCl, Zheng, J.; Jo, S.; Chen, J.; Das, B.; Juhasz, L.; Cabral, H.; Sugihara, K.*, Anal. Chem. 2023, 95 (30), 11335-11341 Nanoscopic force sensitivity of polydiacetylene 2D layered composites with guest molecules, Das, B.; Shioda, N.; Yagi, S.; Oaki, Y.; Sugihara, K.*, Adv Mater Interfaces 2023 DOI: 10.1002/admi.202300745
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、実験4:力感度が混合物に依存するのか?についてさらに研究を進めていく。混合物としては、すでに実験を行なっているゲスト分子に加え、リン酸脂質を調べる。ポリジアセチレンは、人間の細胞膜の主原料であるリン酸脂質と混合することでペプチドに対する検出感度が上がることが知られている。混合物がポリマーの力感度を変化させているのか?この問いに答えるために、ポリジアセチレンにリン酸脂質を組み込むことで、力応答がどのように変化するのかを調べる。長期的には本研究で得られる「どのようなタイプの力に特に反応するのか?」という情報を元に、ポリマーに組み込むレセプターの位置や角度をコントロールすることで、検出物質の付着が発光を効率良く誘起させるようにバイオセンサをデザインし、感度向上を目指す。
|
Research Products
(31 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Development of a desktop mask charger2023
Author(s)
Taisuke Ikawa, Kaito Fujita, Shota Kiuchi, Muhang Li, Atsuhito Kushima, Hayato Takase, Bratati Das, Megumi Morita, Hiroyuki Todo, Miles Pennington, Kaori Sugihara
-
Journal Title
Heliyon
Volume: 9 (4)
Pages: e15359
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-