2022 Fiscal Year Research-status Report
Hierarchical structure change induced by the phase transition in polymers investigated by broadband phase-resolved spectroscopy
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22K03557
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
岡野 真人 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 准教授 (10612525)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | テラヘルツ分光 / 位相分解分光 / 高分子材料 / デュアルコム分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、デュアルコム分光装置を光源としたテラヘルツ光・近赤外光領域での同時同位置・位相分解分光計測を通じて、高分子の階層的な振動構造を分光学的手法によって包括的に明らかにすることを目的とする。 初年度はファイバーレーザーべースのデュアルコム分光装置の開発を目指して、1台目のエルビウムファイバーレーザーを作製し、共振器分散や繰り返し周波数の最適化を行った。次に、ファイバーアンプによって増幅された光パルスのパルス幅を自己相関法を用いて測定し、ファイバー長の調整によってパルス幅の圧縮を試みた。そして、このファイバーレーザーを光源としたテラヘルツ時間領域分光測定系を構築した。発生にスピントロニックエミッターを利用し、検出に光伝導アンテナを利用することで電場時間波形の測定に成功した。 上記の装置開発と並行して、高分子材料のテラヘルツ光学応答への知見を深めるために、市販のテラヘルツ分光装置を利用してポリ乳酸試料の加熱結晶化過程にともなう複素誘電率スペクトルの変化について調べた。近年、新たに発見された4 THz近傍に現れる結晶相由来のピーク構造をプローブとすることでポリ乳酸の結晶化過程を明瞭に観測することに成功した。得られた結果を既存手法であるX線回折法の計測結果と比較したところ、両者には明確な違いが現れることを見出した。 また以前に慶應義塾大学にて開発したデュアルコム分光装置を利用し、デュアルコム分光装置を光源としたテラヘルツ時間領域分光装置の特性評価を行った。その結果、既存の非同期光サンプリング法を用いた測定装置に比べて、位相安定性が著しく向上していることを明らかにした。この成果は本研究の方向性を確認するうえで重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では広帯域位相分解分光計測を通じてポリ乳酸の結晶化過程にともなう振動構造変化を理解することが最終的な目標であるが、そのためにはデュアルコム分光装置の開発と、ポリ乳酸の誘電応答を理解することが重要である。今年度はデュアルコム分光装置開発の一歩目として1台目のファイバーレーザー作製を行い、本光源を利用することでテラヘルツ時間領域分光が行えることを実証した。 装置開発と並行して市販のテラヘルツ分光装置を用いたポリ乳酸の誘電分光測定を行った。複素誘電率虚部に現れる結晶構造特有の4 THzのピークの面積を指標に用いることで結晶化度を評価し、結晶化に要した加熱時間に対する依存性を調べた。その結果、ピーク面積の加熱時間依存性がアブラミの式でよく再現できることがわかり、本手法で不可逆な結晶化過程をモニターできることを実証した。さらに、テラヘルツ分光で見積もられた結晶化度がX線回折法によって見積もられる結晶化度と異なることを見出した。これは、テラヘルツ誘電分光を用いれば結晶化過程について新しい情報を取得できる可能性を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
デュアルコム分光装置の開発を目指して2台目のファイバーレーザーの作製および周波数制御装置の開発、実装を行う。ファイバーアンプの調整を通じてファイバーレーザーを短パルス化することで、発生するテラヘルツ光を広帯域化することを試みる。 また、テラヘルツ分光から見積もられるポリ乳酸の結晶化度の解釈を進めるために、より制御性の高い結晶化ポリ乳酸試料の作製方法を検討する。X線回折法で見積もられた結晶化度と比較することで、テラヘルツ誘電スペクトルがどのようなスケールの結晶構造を反映しているものであるかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の予定に比べて外部機関の機器利用の回数が少なくなったため、機器利用料として確保していた金額が余剰金として生じた。 余剰金は今年度中に物品費および機器利用料として使用する予定である。
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