2022 Fiscal Year Research-status Report
高分子フィルムに対する有機溶媒の優先透過および吸蔵現象
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22K03558
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
千葉 文野 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (20424195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
客野 遥 神奈川大学, 工学部, 准教授 (10746788)
秋山 良 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60363347)
勝本 之晶 福岡大学, 理学部, 教授 (90351741)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ポリオレフィン / ホスト-ゲスト構造 / 共結晶 / 液体分離 / アルカン |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子isotactic poly(4-methyl-1-pentene) (P4MP1)のアズキャストフィルムが様々な溶媒を吸収・透過することを我々は見出し、本研究では透過および吸蔵について調べた。 透過選択性については論文がまだ公表されていないので、本研究の1年目で明らかにした吸蔵特性について以下で述べる。メルトプレスしたP4MP1フィルムをアニール・延伸することで配向フィルムを得ることができ、これを用いて2次元広角・小角X線回折をSPring-8のBL40B2にて計測した。その結果、1978年にKusanagiらが見出しているように、結晶には鎖間方向に散漫な散乱が観測され、この方向のdisorderが示唆された。更に本来なら消滅則により観測されないはずの001ピークが観測されており、安定な結晶構造から歪んでいることが示唆された。この歪は、P4MP1が嵩高い側鎖を持つために、結晶域の鎖間に空隙が生じてしまい、結晶構造を歪ませることで空隙を減らす方向に安定化していることを示している。 更に、溶媒を吸蔵することで、001ピークが概ね消失し、鎖間方向の散漫散乱が軽減された。これは、空隙に分子が入ることで本来の結晶構造を取るようになったことを示唆している。これらの結果は、通常、物質中に空隙を作ることは不安定であり、P4MP1は高分子であることと、側鎖が嵩高いが完全にdisorderするほどに嵩高くないために自然に空隙を有する結晶が創成されていることを示唆している。P4MP1と類似の特性を示すsyndiotactic polystyrene (SPS)においては、空隙を有するδ_e型の結晶構造は最安定ではないのに対して、P4MP1は空隙を有する結晶構造が最安定であり、更に大面積のフィルムを安定的・簡易に得ることができることが、透過選択性を研究する上での大きな利点であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P4MP1フィルム自体のミクロな構造と、ゲストが入った状態での構造とは、以前から解明したいものの1つであったが、一部解明することができた。配向フィルムの2次元X線回折を計測し、更にそれを溶媒浸漬した状態で同様に計測して差分を取ることで、予想以上に多くの情報を得ることができた。この点で計画より進展していると言える。 選択的透過特性に関しては年度内に論文を公表するに至らなかったので計画より遅れている部分もある。平均しておおむね順調に進展したと結論できる。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子P4MP1の構造に関しては、1978年のKusanagiらの論文に各炭素の位置が解明されている。そこで、SPring-8のBL04B2にてP4MP1フィルムと、ゲスト吸蔵した状態のフィルムにおけるX線回折を計測し、リバースモンテカルロ法により、例えば吸蔵された純デカンの様子を描画してみることを計画している。また、2022年度に取得した小角・広角同時測定の中性子散乱の結果の解釈を進め、論文として公表するため、2023年度内に投稿する。選択的透過性についても引き続き重水素化試薬を用いて液体の密度を調整して調べる計画である。
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Causes of Carryover |
2022年度中の投稿を予定していた論文の完成が遅れたため、英文校正は2023年度に行うこととなった。また、分担者の海外長期滞在が新型コロナの流行のために延期されていたが2022年度に実施されることとなったため、分担者の研究計画に変更があった。
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Research Products
(6 results)