2023 Fiscal Year Research-status Report
広周波数帯波動が関与する高速粒子不安定性の非線形開放系シミュレーション研究
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22K03570
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
樋田 美栄子 核融合科学研究所, 研究部, 教授 (00273219)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 高速粒子駆動不安定性 / 低域混成波 / 粒子シミュレーション / 非線形波動結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁場に垂直方向の速度空間分布がリング状となる高速イオンは、核融合プラズマではプラズマ加熱用の高速中性粒子入射によって、宇宙では衝撃波による粒子加速等によって生成される。そのような高速イオンが励起したと考えられる、低域混成波とその高調波が地球磁気圏と核融合のプラズマの両方で観測されている。その生成機構の詳細を、プラズマに高速イオンを注入し続けるというモデルを用いた電磁粒子シミュレーションで解析した。その結果、高速イオンが駆動した低域混成波とその非線形結合によって、波数と周波数がそれぞれ整数倍となる高調波が形成されることを明らかにし、論文を発表した。また、このような高調波構造が形成される条件を調べるために、低域混成波不安定性の支配パラメーターである、電子サイクロトロン周波数とプラズマ周波数の比ならびに高速イオンの速度とアルヴェン速度の比の値を様々に変えてシミュレーションを行ってた。それらの結果について、国内学会・国際会議で発表し、論文を投稿した。また、宇宙と核融合のプラズマはいずれも、様々なイオン種で高速イオンが存在することから、不安定性の非線形発展におけるイオン種依存性についての解析も行った。線形理論では高速イオンの質量が大きいほど低位混成波の成長率は小さくなる。しかし、シミュレーションによって、高速イオンの質量が大きいほど、低域混成波は非線形発展の結果、より大振幅になることを明らかにした。これらの結果について国際会議で発表し、論文を現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高速粒子による低域混成波の不安定性の非線形発展に関するこれまでの粒子シミュレーション研究が評価され、プラズマ・核融合学会で招待講演に選出された。また、今年度の成果をまとめた論文について、発表・投稿・執筆中のものがそれぞれ一本ずつある。パラメータ解析によって、低域混成波とその非線形波動である高調波の生成条件が明らかになりつつあることは今年度の大きな成果であった。また、低域混成波不安生成の非線形発展における高速イオンの質量依存性についても新たな発見があった。これらのことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
高速イオンが励起する低域混成波ならびにその高調波の非線形発展に関して、様々なパラメータに対しる依存性を調べるため、多くのシミュレーションを実行する。そして、これらの結果を整理して、波動励起とエネルギー輸送を支配するパラメータを探求する。また、近年実験観測で報告されている、高調波のサイドバンド着目した、非線形波動構造の詳細解析も行う。さらに、これまでのシミュレーションでは主にプラズマのイオンを1種類と仮定していたが、多種類のイオンを含むプラズマに拡張してシミュレーションを実行する。これにより、低域混成波とその非線形波動によって、重イオンが選択的に加速される場合があるのかを解析する。また、不安定性を引き起こす高速粒子の生成にも着目し、宇宙における粒子加速に深く関与する非線形磁気音波の理論・数値解析などに取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
スーパーコンピュータを用いたシミュレーションの実行数が、他の利用者の状況にも依存することもあり、予定していたよりも少なかった。また、共同研究者との打ち合わせを主にオンラインで行ったため、出張回数を減らすことができた。次年度は、パラメータ解析を増やすため、シミュレーションのデータが大幅に増加する見込みである。また、核融合研のスーパーコンピュータのリバイスに向けて、これまで蓄積してきたデータの保存が必要となる。そのため、これらのデータの保存用に、次年度に繰り越した予算を利用する。また、これらのシミュレーション解析について論文成果に繋げるべく、共同研究者との打ち合わせのための旅費として使用する。
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