2023 Fiscal Year Research-status Report
大電力パルススパッタ法を用いたカーボンイオンの高効率生成メカニズムの探求
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22K03590
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
太田 貴之 名城大学, 理工学部, 教授 (10379612)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大電力パルススパッタ / アモルファスカーボン / イオン生成過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イオン化が困難な炭素原子のイオン化を促進し基板に供給するイオン化スパッタプロセスを実現するために、大電力パルススパッタを用いた高エネルギーイオンの高効率生成手法の探求を目的としている。具体的には、①高電圧パルス(パルス間隔、パルスの極性、パルス幅等)及び②希ガスの効果について、硬質アモルファスカーボン薄膜の膜質評価とともに質量分析法及び発光分光法等のプラズマ診断を行うことで、イオン生成過程と基板への輸送過程を体系的に明らかにすることである。本年度は、①高電圧パルスの効果として、ダブルネガティブパルスにおける2つのパルス間隔や電圧比の効果を検討した。パルス間隔が狭いほどイオンの生成が促進され成膜速度が向上するが、硬度向上に関しては適切なパルス間隔が存在し炭素イオンとアルゴンイオンの入射比が重要であることが示唆された。電圧比の効果については、第1番目のパルスを予備放電として用い、第2番目のパルス電圧を大きくすることが、イオン生成に効果的であることが示唆された。②希ガスの効果として、ネオンガス、アルゴンガス、キセノンガスでのDLC成膜と質量分析を用いた各種イオンの気相診断を行った。異なる希ガスを用いた場合でも、それぞれガスに適切な放電条件を選択することにより、約30GPaの高硬度DLCが得られることがわかった。また、エネルギーアナライザ付き質量分析装置を用いて、大電力パルススパッタリング中の炭素イオンと希ガスのエネルギー分布の測定を行い、イオンフラックスは希ガスの質量が小さいほど大きくなることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、①ダブルネガティブパルスにおける2つのパルス間隔や電圧比の効果の効果、②ネオンガス、アルゴンガス、キセノンガスを用いた希ガスの効果について、実験を進めた。それぞれに対して、硬質アモルファスカーボン薄膜の膜質評価(ラマン散乱分光、XPS、XRR)とともにエネルギー分解及び時間分解質量分析によるイオンフラックスとエネルギーの評価を行った。また、基板間距離やパルス周波数依存性についても実験を進めていることと、共同研究としてIRMを用いた0次元計算機シミュレーションにも着手している。これらより、研究は当初計画の予定どおり進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年までの得られた結果に加えて、①基板間距離やパルス周波数依存性等の実験から、時空間の変化がイオン化に与える効果を調査する。また、②混合希ガスの効果について調査する。これらの実験的解析と0次元計算機シミュレーション解析の結果を基に、炭素と希ガスのイオン生成過程と基板への輸送過程、及び膜質の関係を体系的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
物品費である消耗品の端数が残額として残った。翌年度分の消耗品代と合わせて研究に使用する。
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