2023 Fiscal Year Research-status Report
Non-perturbative effects of quantum gravity from JT gravity matrix model
Project/Area Number |
22K03594
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
奥山 和美 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (70447720)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 二重極限SYK模型 / DSSYK / JT重力 / ホログラフィー対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、二重極限SYK模型(DSSYK)について研究した。立教大学の鈴木氏と共同で、DSSYKの相関関数の半古典展開を1-loopまで計算し、それがLiouville理論の計算と一致することを示した。また、DSSYKの分配関数の高温展開は有限の収束半径を持ち、収束半径が分配関数のゼロ点で決まることを見出した。JT重力の場合と同様に、DSSYKにEOWブレーンを導入することができ、対応する波動関数がビッグqエルミート多項式で与えられることを示した。DSSYKの分配関数のジーナス展開の高次の項は、行列模型の位相的漸化式から一般的に計算することができ、トランペットとWP体積の離散版の組み合わせで表されることが分かった。特に、ジーナス1の寄与として、ワームホール時空上のDSSYKの相関関数を計算し、ワームホールがピンチする極限でもUV発散が無いことを示した。 DSSYK以外の研究としては、JT重力の行列模型を用いたホログラフィー対応の研究を行った。明治学院大学の酒井氏と共同で、スペクトル形状因子の遅い時間の振る舞いを系統的に計算する手法を開発した。酒井氏及び大阪大学の飯塚氏、姉川氏と共同で、スペクトル形状因子の多点関数への一般化を議論した。また、信州大学の博士学生である立花氏と共同で、エンタングルメント・ネガティビティーに対してキャパシティーという量を定義し、支配的に寄与するレプリカワームホールが入れ替わることを反映して、その量の時間発展に2つのピークが現れることを議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、DSSYKとJT重力の研究を精力的に行い、単著及び共著論文を複数出すことができた。当初思っていたよりも多くの成果が上がっており、計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、DSSYKの研究を継続する予定である。特に、バルクの量子重力のヒルベルト空間の構造を理解したいと考えている。また、ブラックホールのファイヤウォールやホワイトホール相について、DSSYKを用いて何か言えないか、共同研究を行うことを考えている。2024年度は本研究課題の最終年度であるため、結果を論文にまとめて出すことを目標にしている。
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Causes of Carryover |
大学院生のRA経費が、学生の都合により少なくなったこと、当初参加を予定していた学会がオンラインになって旅費が少なくて済んだこと、等により次年度使用額が生じた。 次年度は本研究の最終年度であるので、旅費・備品として支給額を使い切る予定である。
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