2022 Fiscal Year Research-status Report
New Avenues in Axion Cosmology
Project/Area Number |
22K03595
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 洸 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 客員研究員 (10867980)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アクシオン / インフレーション / 暗黒物質 / 量子揺らぎ / スクイーズド状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画の目的は、未だ発見されていない素粒子であるアクシオンの研究を通して、宇宙の様々な現象や宇宙進化を統一的に理解する事である。そのためにはミクロのスケールを記述する素粒子物理学と、マクロのスケールにおける天文・宇宙物理学を組み合わせる多角的な手法を用いる事が重要である。本年度は、具体的には以下のような研究を行った。 (1)アクシオンを位相方向として持つ複素スカラー場である Peccei-Quinn 場によって、宇宙のインフレーションの起源・暗黒物質の正体・Strong CP 問題をまとめて解決する可能性を調べた。特に Peccei-Quinn 場によるインフレーションが、理論の紫外完備の詳細に強く依存する点に着目し、高次元演算子による観測量への影響を包括的に解析した。更にこの解析結果を用いて、紫外完備に依存する高次元演算子への強い制限を導出した。また、インフレーション後の Peccei-Quinn 場のダイナミクスが、宇宙の再加熱やアクシオン暗黒物質の生成に与える影響を調べた。 (2)アクシオン場の量子揺らぎが、インフレーション中に位相空間の特定方向において抑圧される(いわゆるスクイーズド状態になる)現象を調べた。スクイーズド状態がインフレーション後のアクシオン場の時間発展によって強く影響される事を明らかにし、この事象を解析的・数値的な手法を組み合わせる事で詳細に調べた。更に、スクイーズド状態とアクシオン暗黒物質の等曲率揺らぎとの関係についても明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書には、4年間を通しての研究課題として以下の4つを記載した:(1)アクシオンによる宇宙密度揺らぎ生成理論の検証、(2)アクシオン暗黒物質の質量と生成メカニズムに関する包括的研究、(3)アクシオン起源の暗黒エネルギーとハッブル定数の測定問題、(4)アクシオンによるバリオン生成理論の検証。初年度である22年度においては(1)がほぼ完了し、(2)も(アクシオンの量子揺らぎのスクイーズド状態の研究を通して)部分的に完了した。したがって、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
22年度中に行った研究(Peccei-Quinn 場によるインフレーションに関する研究と、アクシオン場の量子揺らぎのスクイーズド状態に関する研究)の成果を論文にまとめると共に、様々な研究会において成果を広く発表していく。その後は、これらの研究課題を更に拡張する予定である。具体的には、Peccei-Quinn 場によるインフレーションが終わった後の場のダイナミクスに関する数値計算を用いた解析や、スクイーズド状態に関する解析手法を他の様々な物理システムへ応用する事を予定している。それらと並行して、研究計画に記載した残りの研究課題(アクシオン起源の暗黒エネルギーとハッブル定数の測定問題と、アクシオンによるバリオン生成理論の検証)も進めていきたい。
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Causes of Carryover |
22年度においては新型コロナウイルス感染症の影響で多くの研究会がオンラインで実施され、更に多くの出張において費用が先方によって負担されたため、旅費の使用が予定したよりも少なくなった。23年度はオンラインでない研究会も増える事が予想されるので、研究会での成果発表や、共同研究者との対面での打合せをより頻繁に行っていく予定である。
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