2023 Fiscal Year Research-status Report
Resurgenceを用いたwormholeのダイナミクスの解明
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22K03606
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
黒木 経秀 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40442959)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 行列模型 / wormhole / BEC / back reaction |
Outline of Annual Research Achievements |
Double trace項を含む行列模型の解析法として、character展開が適していると予想を立て、その方向性を検討した。その際得られたアイディアとして、逆に指標展開が可能な行列模型に対してwormholeの寄与を評価する新しい方向性に気づき、その検討も行った。具体的には、超対称ゲージ理論に付随する行列模型がこのタイプであり、これらは確かにdouble trace項の和で表されることに注目した。この模型におけるwormholeの寄与について解析することを予定している。また、double trace項を含む行列模型の解析は難しいが、文献調査の結果、それを含まない行列模型でも同じ連続極限を与える可能性が指摘されていることが分かった。急遽その正当性の解析を行っている。String equation等の提案もなされているため、昨年度我々が求めた摂動級数や非摂動効果が再現されるかを確認することにより、直ちにその正当性が確認可能な状況である。 一方、well-definedな模型でwormholeの記述をする必要性を感じ、BECにおけるblack hole, white holeの解析を行った。まず理論を完全に定義するため、先行研究の設定がBECとして実際に実現できるかを調べた。その結果、先行研究では見過ごされているいくつかの重要な制限が付くことを発見した。またGross-Pitaevskii方程式において、backgroundとその周りの揺らぎを分離し、逐次両者の高次項を取り入れていくことにより、back reactionが系統的に取り扱えることを示した。この結果に基づき、Hawking radiationによるback reactionを2点関数の形で具体的に求め、それを用いてback reactionを受けた背景中での揺らぎの波動関数を陽な形で求めることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Double-trace項を含む行列模型自体の解析はあまり進んでいないものの、逆にcharacter展開可能な行列模型におけるwormholeの解析、という新しい方向性が見えてきている。また、double trace項がない模型で連続極限で等価なものがあれば、それを用いてColemanの機構を調べるというこれも新しい展開が現れている。本研究から着想を得たBECにおけるback reactionの解析も、wormholeのダイナミクスに対しwell-definedな記述を与えることのみならず、近年のinformation loss問題の解決にも大きな知見を与え、意義が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず先行研究て提案されているdouble trace項を持たない行列模型との等価性を確認する。具体的には、以前我々が求めた摂動級数や非摂動効果が、提案されているstring equationを満たすかを確認する。もし正当性が確認できれば、そのstring equationを用いて宇宙の体積の鞍点評価などにより、Colemanの機構を確認する。 BECの解析においては、本研究で求めた波動関数の具体形からBogoliubov係数を求め、そこからHawking radiactionのentanglement entropyを導出し、Page curveへの知見を得る。また、同様の考察をwhite holeへも適用し、さらにwormholeへ応用する可能性を追究する。
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Causes of Carryover |
共同研究者とはメールで議論することにより、研究に支障はなかった。特に在外の共同研究者と国内で議論できたため、海外へ渡航する必要性が生じなかった。また、オンラインの研究会が増え、情報収集も問題なく行えた。また、BECの研究という新しい展開があったため、じっくり理論の解析を行うことに重点を置いた。次年度はBECの研究等で成果が見込まれるため、積極的に研究会現地を赴き、研究発表および参加者と議論する予定であり、そのために主に旅費に助成金を支出する予定である。
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