2022 Fiscal Year Research-status Report
Role of gluons in hadron structure explored by lattice QCD
Project/Area Number |
22K03612
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 勝一 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60332590)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ハドロン / 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / 核子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、核子の構造を特徴づける物理量に対する理論計算を、縮退した軽いアップ・ダウンクォークと、それらよりも重いストレンジクォークの真空偏極を取り入れた、2+1フレーバー格子QCD計算により行なっている。その研究遂行のために格子QCDグループPACSにより生成された「PACS10」と呼ばれるQCDゲージ配位を用いる。PACS10配位は、π中間子が実験値135MeVに相当するクォーク質量(物理点での評価)で 1辺が10 fmを超える物理体積(有限体積の除去)で生成されたQCDゲージ配位で、核子構造の理解のための精密第一原理計算に適している。PACS10配位は、格子間隔が3種類あり、核子構造に対しては、そのうち2つの粗い格子間隔(0.08 fm、0.06 fm)での格子QCD計算のみ行われてきた。当該年度は、当初、3つ目の格子間隔(0.04 fm)での格子QCD計算を計画していたが、R04年度HPCIスパコン富岳一般利用申請が採択されなかったため、JCAHPCのスパコンOdysseyを使って計算可能な格子間隔(0.06 fm)での格子QCD計算を継続し、核子三点関数から核子行列要素の情報を引き出す際に生じる系統誤差の精査を行なった。この系統誤差は、最も高精度で評価できる核子軸性電荷に対しては、すでに達成できている統計誤差2%より十分小さく抑えられていることを確証した。また、核子軸性電荷に対しては、有限格子間隔に伴う系統誤差が十分に小さいことも同時に検証できたため、2つの格子間隔の計算結果のみで、核子軸性電荷の実験値を2%精度で再現できていることが、物理点での計算として世界で初めて示せた。しかし、他の物理量に対しては、有限格子間隔に伴う格子離散化誤差が無視できず、その系統誤差の除去が必要であることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、格子QCDグループPACSにより生成された「PACS10」と呼ばれるQCDゲージ配位を用いることで、π中間子が実験値135MeVに相当するクォーク質量(物理点での評価)で 1辺が10fmを超える物理体積(有限体積の除去)により、核子構造を特徴づける物理量に対して格子QCD計算を行なっている。当該年度はHPCIの富岳利用研究課題のA期及びB期の利用申請が採択されれず、スパコン富岳の利用による格子QCD計算が行えなかったため、当初予定していた3つ目の格子間隔(0.04 fm)による数値計算を断念し、2つ目の格子間隔(0.06 fm)での計算を引き続き行い、核子三点関数から核子の基底状態による行列要素を評価する際に伴う、核子の基底状態以外からの寄与による系統誤差の精査するにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度はHPCIの富岳利用研究課題のA期及びB期の利用申請が採択されれず、スパコン富岳の利用による格子QCD計算が1年間行えなかったが、次年度はすでに通年でスパコン富岳利用申請が採択されている。そのため、R5年度は、3つ目の格子間隔(0.04 fm)上で核子構造に関する格子QCD計算が実施可能な状況となっている。残りの格子間隔(0.04 fm)の計算が完了すれば、有限格子間隔に伴う系統誤差が無視できるほど小さかった核子軸性電荷以外の物理量に対しても、3つの計算結果から有限格子間隔に伴う格子離散化誤差を除去(連続極限)することが可能になるため、実験値との直接比較ができるようになる。
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Causes of Carryover |
世界的な新型コロナ禍での国際会議のキャンセルや学会、国内研究会のオンライン化に伴い、当初見込んでいたそれら国際会議、研究会、学会への参加費用や旅費及び滞在費の支出がなくなったため。今後、新型コロナ感染状況が改善すれば、国内外の国際会議や研究会の通常開催が行われると予想される。そのため次年度に、再開された対面型の国際会議や研究会への参加のために使用することを計画している。また、新型コロナ感染状況が改善しない場合でも、今後ますますオンラインによる研究交流や研究発表の機会が増えるため、そういったオンラインによる研究活動を円滑に行うための環境改善の経費として使用することや、スパコンの有償利用により研究を促進を行うため、その利用負担金として使用することも考えている。
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