2022 Fiscal Year Research-status Report
微視的構造・反応計算を用いた陽子散乱・α散乱解析による原子核の励起モードの解明
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22K03633
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金田 佳子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40300678)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | クラスター構造 / 中性子過剰核 / 双極子励起 |
Outline of Annual Research Achievements |
拡張した反対称化分子動力学法(AMD法)を用いて微視的核構造計算を行い、安定・不安定原子核の基底状態と励起状態について、アイソベクター型(IV:陽子と中性子が逆位相)とアイソスカラー型(IS:陽子と中性子の位相がそろったモード)の励起強度を解析した。不安定 原子核の低エネルギー励起に現れる新奇な励起モードとして、特に、クラスターモード、余剰中性子モード、渦型モードなどに注目して、新しい励起状態を理論的予言を行った。具体的にはBe同位体、酸素同位体について中性子過剰核における負パリティをもつ励起状態を理論的に予言し、その励起モードの特徴を陽子と中性子モードに分離することによって解析した。新しい解析方法として、パリティ反転を陽子と中性子の両方に行ったアイソスカラー型の励起モードと、陽子だけをパリティ反転した励起モードに分離した方法を開発し、アイソスピンの性質をより詳細に解析することに成功した。また、アイソスピンの性質が異なる負パリティ励起状態のモードを結合させた理論計算を行い、2つのモードの混合によってエネルギー的に安定な解が得られることがわかった。 理論的に予言した励起状態を実験的に検証するために、Be同位体に対する陽子非弾性散乱およびα粒子の非弾性散乱の反応計算を行った。スピンJ=2(+)とJ=3(-)については直接遷移が強いために大きな断面積を持つ。これに対して、J=0(+)やJ=1(-)状態への直接遷移は弱く、他の状態からの回り込みの寄与が大きく、断面積の計算にはチャネル結合を考慮した反応計算が重要であることが明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アイソスピンの性質をより詳細に解析するための新しい解析方法として、パリティ反転を陽子と中性子の両方に行ったアイソスカラー型の励起モードと、陽子だけをパリティ反転した励起モードに分離した方法を開発した。さらに、この手法を応用することで、より安定な負パリティ励起状態を記述することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは予言した負パリティ状態の性質を理論的に解析する。特に、クラスターモード、余剰中性子モード、渦型モードがどのエネルギー領域に出現するか調べ、中性子過剰核の低励起モードの特質を明らかにする。余剰中性子の役割を明らかにするためには、アイソスピンの性質として、アイソベクター・アイソスカラーの寄与の度合を評価することが重要である。さらに原子核の変形方向に対して、変形軸に沿った並進振動モードと垂直方向の並進モード、渦型のねじれタイプのモードなど、異なるタイプの励起様式が共存すると予想される。角運動量の変形軸成分に注目した計算と解析を行うことによってそれらの性質を明らかにする。 予言した励起状態を実験的に検証するために、陽子・αの非弾性散乱の反応計算を行い、観測されうる断面積の理論値を示す。アイソベクター型の励起モードについては中性子励起が強いため、陽子非弾性散乱で励起しやすいと予想される。陽子とα非弾性散乱の断面積の比を解析することで、強い中性子励起の特徴がどのように観測に寄与するか示す。非弾性散乱の一般的性質として、スピンJ=1の双極子励起状態への直接的な遷移は比較的弱く、むしろ、J=2(+)およびJ=3(-)状態の断面積が大きいという特徴をもつ。このため、負パリティ状態の励起モードの回転帯であるJ=3(-)状態に注目し、その状態への断面積を詳しく調べる。
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Causes of Carryover |
計画していた国内出張について、研究打合せ予定であった共同研究者が新型コロナに感染したため、3月の出張を4月に延期せざるを得なかった。
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