2022 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study toward multi-messenger observations of black holes
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22K03639
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
本橋 隼人 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (00708563)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ブラックホール / 重力波 / 電磁波 / 準固有振動 / 散乱 / 特殊関数 / 超幾何関数 / ホイン関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界各地の電波望遠鏡や重力波干渉計の共同観測は、ブラックホールの性質を様々な角度から解き明かすものであり、これに伴って理論面での理解が喫緊の課題となっている。一般相対論におけるアインシュタイン方程式の解として、回転していないブラックホールを表すシュバルツシルト時空、回転ブラックホールを表すカー時空が知られている。本研究ではこれらのブラックホール時空における重力波や電磁波の伝搬を研究対象とした理論的研究を行う。 連星ブラックホールの合体直後に生じる重力波はリングダウン重力波と呼ばれ、特徴的な減衰振動を示し、線形摂動の範囲では準固有振動の重ね合わせで記述される。現実のブラックホールにおいては周囲の物質の影響などにより、カー時空からわずかにずれた時空になると考えられる。このずれを考慮して実効ポテンシャルに摂動を加えると、リングダウン重力波もわずかに変更されるが、一方で、準固有振動数が大きく変更されてしまい、一見すると非整合的な振る舞いを示すことが知られていた。本年度の研究により、重力波の散乱における反射・透過係数の実軸上の値に注目し、量子力学のS行列の位相のずれに対応した物理量を導入することで、実際のリングダウン重力波を司る実効的な準固有振動数が特定できることを明らかにした。 ブラックホール時空における電磁波や重力波の伝搬を司る微分方程式の解は、超幾何関数やホイン関数といった比較的よい性質を備えた特殊関数を用いて記述される。超幾何関数の微分は異なる引数を持った超幾何関数を与えることが知られているが、その分類や導出について議論されることは少ない。本年度の研究により、超幾何関数の微分恒等式について、級数展開に基づいた簡潔な導出方法を与えるとともに、恒等式を系統的に整備することができた。研究成果にはこれまでに知られていなかった恒等式も含まれており、今後の応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にまとめた上記の研究成果は査読付論文としてすでに出版済みであり、国際研究会での発表も行った。また、準固有振動と非エルミート系の関係に注目した研究も進行中である。すでに研究成果が得られており、順調に進展していると言える。準固有振動はブラックホール時空における線形摂動の発展方程式より導かれる。これは量子力学のシュレーディンガー方程式と同種の方程式だが、境界条件が異なるため、通常の束縛状態の定義をそのまま適用しようとすると、内積が発散してしまう。このような状況は原子核の不安定状態の解析においても現れる。これを克服するために適切な内積を定義する処方箋が非エルミート量子力学の分野で知られているが、これを一般化し、回転ブラックホールに応用した解析を行った。解析の過程において共鳴に類似した興味深い現象も発見され、これは新しい内積を利用した計算により説明できることを明らかにした。結果は解析計算と数値計算の両面から確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はない。非エルミート系の観点から準固有振動を調べた研究成果をとりまとめて論文を執筆する。また、リングダウン重力波からの準固有振動の抽出について、検討を進める。準固有振動のうち最も減衰率が小さい基音モードは、リングダウン後期に支配的になるため抽出は容易である。次に減衰率の小さい第1倍音モードについても、安定して抽出できることがわかっている。第2倍音モード以降の高倍音が抽出できるかどうかが、ブラックホール分光学の観点から重要であり、今後の課題となる。上記の研究実績の概要で述べた位相のずれの利用や、周波数領域・時間領域での解析の相補的な比較などを通じて、研究を遂行していく。ブラックホール時空における電磁波や重力波の伝搬についても、本年度までの研究成果を利用しながら引き続き解析を進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で対面での会議への参加や、対面での研究打ち合わせを見送ったため。今後は対面での機会も徐々に増えていくと予想される。次年度使用額を出張費等に充て、研究成果の発表と外部研究者との議論を通じて、研究計画を推進する。
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Research Products
(15 results)