2022 Fiscal Year Research-status Report
A mathematical approach to black hole perturbation theory
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22K03641
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
初田 泰之 立教大学, 理学部, 准教授 (00581084)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ブラックホール摂動論 / 準固有振動モード / 超対称性 / 指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2通りの観点から研究を進めた。
まず1点目は4次元時空で最も高い超対称を持つ場の量子論(N=4超対称性ゲージ理論)のシューア指数というものを調べた。このような指数は超対称局所化によって有限次元積分によって評価されるが、特にこの積分を上手く書き換えることで、統計力学の理想フェルミ気体の分配関数の形が得られる。このような対応関係を利用することでシューア指数の厳密な表式を得ることに成功した。これは有限次元積分を実行するよりも高速に指数を評価することができる点で大変有用である。 さらに指数だけでなく、超対称性を保つような局所演算子が挿入された相関関数についても拡張が可能であり、その厳密な結果を得ることもできたプレプリントサーバーarXivに投稿済みであり、学術雑誌にも投稿中である。次年度以降はこれらの結果を踏まえてブラックホールの微視的状態の数え上げに応用していきたい。
2点目はブラックホール摂動論の準固有振動モードについてである。ブラックホールに摂動を加えると、応答として固有の振動モードが現れるが、これを具体的に計算するには2階の常微分方程式を調べる必要がある。この常微分方程式は量子力学のシュレーディンガー方程式と同じ形をしており、量子力学で培われた手法が応用できると期待される。本研究ではブラックホール準固有振動数を摂動的に評価する一般的手法の開発に取り組んだ。量子力学では摂動論の方法は非常に強力であり、教科書で必ず取り上げられるトピックであるが、これをそのままブラックホール準固有振動数に応用することはできない。我々はこの困難を克服し、一般的な状況で準固有振動数の摂動展開を系統的に評価する手法を開発した。現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度のため、本研究課題の準備期間と位置づけ、超対称ゲージ理論の指数に関する研究とブラックホール摂動論の基礎的な研究を行った。前者は現時点では直接はブラックホール摂動論とは関係しないが、今後微視的状態の数え上げ、ゲージ・重力対応への応用などを視野にいれ研究を行っていく。後者もまだ研究論文としては完成していなが、来年度にも完成する予定である。以上を踏まえて当初の予定通りであると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果を踏まえ、指数のブラックホール物理への応用などのブラックホール摂動論と超対称ゲージ理論の対応関係の深い理解を目指して研究を行っていく。
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Causes of Carryover |
今年度は未だに新型コロナの影響のため、海外出張が難しかった。翌年度以降は影響が少なくなるため、積極的に海外出張を行う予定である。
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