2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K03647
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
片桐 秀明 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50402764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 良治 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (80183755)
村石 浩 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (00365181)
加賀谷 美佳 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (10783467)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ガンマ線 / 宇宙線 / コンプトンカメラ / シンチレーションファイバー / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河系内の宇宙線がどこでどのように加速されているか?という宇宙線起源の問題は、宇宙物理学上の重要な問題である。特に (a)本当に、加速される高エネルギー粒子=宇宙線(高エネルギーの原子核)なのか?(b) 銀河内宇宙線のエネルギー収支は本当に成り立っているのか? という核心的な問いは未解明である。これらを明らかにするには、銀河宇宙線のエネルギーの主要な部分を担っている低エネルギーの宇宙線を直接的に探査できればよい。鍵となるのが、低エネルギー宇宙線が星間物質中の原子核を励起した後に生ずる脱励起ラインガンマ線である。本研究では、低エネルギー宇宙線の直接探査が可能な2-10MeVの脱励起ガンマ線に特化した高感度ガンマ線カメラの基礎開発を行い、その有効性を実験的に検証することを目的とする。カメラは研究代表者が考案したシンチレーションファイバーを用いた電子飛跡型コンプトンカメラである。研究代表者はこれまで、小型のプロトタイプとして散乱体が8mm×8mm×8mmの検出器を開発・評価した。また大型プロトタイプとして散乱体が32mm×32mm×64mと大型で多重散乱事象まで評価できるものを開発中である。 現在までに、大型プロトタイプの上側の増設を行い、また大型プロトタイプのトリガー回路の改良を行っている最中である。今後、まずは大型プロトタイプのトリガー回路の改良を完成させる。さらに、小型プロトタイプカメラに到来時間を精度よく測定可能にする改良を行い、環境ミューオンの測定を再度行い、偶発的なバックグラウンド事象が軽減されているか検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2-10MeVの脱励起ガンマ線に特化した低エネルギー宇宙線探査用ガンマ線カメラの基礎開発を行い、その有効性を実験的に検証することを目的とする。カメラはシンチレーションファイバーを用いた電子飛跡検出型コンプトンカメラである。本研究では、多数のファイバーで1枚のファイバープレートを構成し、1層毎に90度回転させてX, Y方向に重ねたコンプトン散乱体からの発光を撮像することで、反跳電子の3次元的な運動を捉えることを目的とする。研究代表者はこれまで、小型のプロトタイプとして散乱体が8mm×8mm×8mmの検出器を開発・評価した。また大型プロトタイプとして散乱体が32mm×32mm×64mと大型で多重散乱事象まで評価できるものを開発中である。本研究では、①小型プロトタイプによるカメラの原理実証 ②大型プロトタイプのトリガー回路の改良 ③大型プロトタイプの上側の増設 ④大型プロトタイプの実験室での評価 を行う。 現在までに、③大型プロトタイプの上側の増設を行い、また②大型プロトタイプのトリガー回路の改良を行っている最中である。③はファイバー検出器の上側32mm×32mm×32mmを増設した。②はトリガー出力を行う光検出器であるMPPCアレイが実装された基板の開発を行った。これまで光検出器としては多チャンネル光電子増倍管を用いていたが、信号読み出し回路との相性が悪くノイズの影響を受けやすく、また各チャンネルの増幅率の調整が難しかった。MPPCアレイ実装基板を開発し、LEDからの光を照射して実際に信号波高値のスペクトルが各チャンネルで取得でき、チャンネル毎に増幅率を調整できることを確認した。また、X方向、Y方向のトリガー信号の論理積をとり、同期した信号だけ取得するシステムを開発中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、①小型プロトタイプによるカメラの原理実証 ②大型プロトタイプのトリガー回路の改良 ③大型プロトタイプの上側の増設 ④大型プロトタイプの実験室での評価 を行う。現在までに、③大型プロトタイプの上側の増設を行い、また②大型プロトタイプのトリガー回路の改良を行っている最中である。 今後の研究の推進方策としては、まずは②大型プロトタイプのトリガー回路の改良を完成させる。現在、X方向、Y方向のトリガー信号の論理積をとり、同期した信号だけ取得するシステムを開発中である。単純に論理積のトリガー信号出力には成功しているが、信号取得中に追加でトリガー信号を受け付けない機構(Veto回路、あるいはbusy信号の使用)を組み込む必要がある。Veto回路を組み込み、実際に動作するか検証する。また、①小型プロトタイプによるカメラの原理実証を行うが、原理実証の前に信号読み出しモジュールで到来時間を精度よく測定可能にする改良を行う。信号読み出しモジュールは、搭載されているFPGA(書き換え可能な集積回路)に専用のコードを書き込むことで、1ナノ秒程度の精度で到来時間を測定できる。時間精度が悪いと、偶発的に同時計数されてしまうバックグラウンド事象が増加してしまうため、信号事象を選別することが難しくなり検出器性能の検証が困難になる。小型プロトタイプカメラに到来時間を精度よく測定可能にする改良を行い、環境ミューオンの測定を再度行い、偶発的なバックグラウンド事象が軽減されているか検証する。
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Causes of Carryover |
2022年度の一部を次年度の国際会議参加費や実験消耗品等に使用する方が研究課題遂行に有効であると判断して次年度使用とした。使用計画としては、宇宙線国際会議の参加費や高エネルギー宇宙連絡会の会費や実験消耗品等に充てる予定である。
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