2022 Fiscal Year Research-status Report
超高温高密度下における宇宙最速渦とスピン偏極メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K03648
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新井田 貴文 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00861808)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 偏極 / 渦 / 高エネルギー原子核衝突 / 同重体 / STAR実験 / 強磁場 / ハイペロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、相対論的原子核衝突において観測された偏極および渦現象のメカニズム解明を目的としている。偏極の符号問題を実験的に検証するために、STAR実験にて2018年に取得された高統計の同重体衝突データの解析を行い、局所渦の探索を行った。楕円フローだけでなく、衝突初期の密度揺らぎに起因する三角膨張フロー方向にラムダ粒子が偏極していることを初めて観測した。楕円フロー由来の偏極は、衝突エネルギーや衝突システムサイズには大きく依存しないことが判明したが、フロー同様に偏極度が運動量に依存することもわかった。観測された偏極データは、局所的渦度だけではなく、剪断応力テンソルからの寄与を考慮した理論計算でよく再現できることがわかった。本解析結果を国際会議で発表し、学術雑誌(Physical Review Letters)へ投稿したところである。 さらに原子核衝突で生じる強磁場の検証として、グルーバル偏極は2つの同重体衝突間に違いがあるか、ラムダおよび反ラムダ間に違いがあるかを調べるための解析を行った。プレリミナリーの結果としては、両者ともに統計的有意な差はないというのが現状の結論であるが、運動力学的フリーズアウト時の磁場強度に上限をかけることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STAR実験で取得した同重体衝突データの解析を行い、三角フローによるラムダ粒子偏極の観測に初めて成功した。得られた物理結果はSTAR Preliminaryとして承認され、複数の国際会議で発表した。さらに投稿論文の準備、提案を行い、STAR実験内部審査を経て、学術雑誌(Physica Review Letters)へ投稿した。これと並行して、磁場による偏極への寄与を検証するために、グルーバル偏極のラムダ粒子と反ラムダ粒子間の違い、2つの同重体衝突間の違いについて、詳細な解析を行い、STAR Preliminaryとして承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、現在投稿中の論文を出版するとともに、磁場検証を目的とした同重体衝突におけるグローバル偏極の解析をさらに推進する。また、ビームエネルギー走査実験フェーズ2におけるグローバル偏極のデータ解析にも着手する。2023年5月からSTAR実験が開始されるため、マルチストレンジネスの偏極のための高品質データ取得のためのオフラインデータQAや実験シフトを取得する予定である。また、マルチストレンジネス偏極解析の準備として、2019年に同じ検出器セットアップで取得された金原子核衝突200GeVのデータを用いて、マルチストレンジハイペロン識別の最適化を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた計算機と同等並の機能を持つ別機種が安価な価格で新規発売されたため、そちらを購入した。一方で、円安および物価高による影響で、海外を含む出張費が想定以上にかかったため、1回の海外出張のみになった。円安および物価高の状況は引き続くと考えられるため、前年度の残額を今年度の出張費に充てる予定である。
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Research Products
(13 results)