2022 Fiscal Year Research-status Report
フォトニック結晶の共鳴遷移放射を応用した革新的素粒子検出器の基礎開発
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22K03650
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山口 洋平 東京工業大学, 理学院, 助教 (30751119)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光学多層膜 / 遷移放射 / ハドロン同定 / ジェットフレーバー識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
誘電率の境界が極めて周期的に作られるフォトニック結晶を通過させることで、1荷電粒子による遷移放射が共鳴する現象の実証実験を進めている。まず結晶のデザインのために、数値計算の開発を進めた。結晶に閉じ込められる遷移放射の量を大幅に削減する設計を完成させ、これによりSiO2とNb2O5を100層ほど繰り返すことで、Lorentz Factor 500程度の超相対論的な運動を行っている荷電粒子に対して、共鳴が観測可能になることを突き止めた。先行研究では3000層程度の積層で初めて観測が可能になることに比べると、飛躍的な改善である。さらに光学多層膜メーカー数社との打ち合わせを繰り返し、スパッタリング手法で成膜すれば、共鳴を起こすのに必要な膜厚の精度が得られる見通しを得た。ただし100層もの積層を行う過程で、SiO2とNb2O5の応力の違いによって、膜が剥がれる危険があることが明らかになり、より少ない層数での観測の可能性を探っている。 共鳴遷移放射を測定するための検出器の製作も進めている。放射のスペクトル、角度分布を可視光域で取得するデザインを組み立てた。読み出し回路の製作を開始し、現在性能の評価を進めている。 将来的に共鳴遷移放射によって超高エネルギーのハドロン同定が可能になった際の、それを利用したジェットフレーバー識別の開発も並行して遂行した。LHC-ATLAS実験において現在使用されているボトムジェットの識別アルゴリズムにハドロン同定の情報を加えた結果、改善の可能性が示唆された。しかし識別を行う機械学習のアーキテクチャによって、改善の程度が大きく変化することも明らかになった。これはBハドロンの崩壊過程を再現するような機械学習を実現する必要性を示唆しているため、今後はハドロン同定の情報を最大限に生かすアーキテクチャの設計を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フォトニック結晶の設計において数値計算結果に先行研究との差異が見つかったため、数値計算の開発に遅れが生じた。具体的には共鳴遷移放射の角度分布において、本研究における当初の計算ではそのまま角度分布を計算していたが、先行研究では短い角度インターバルで積分を実行した結果を示していた。この差の理解に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶の設計を完成させ、少ない層数の試作品を複数製作する。この結晶に実際に放射線、および宇宙線ミューオンを入射させて、背景事象の理解を進めるとともに、検出器を完成させる。最終的な共鳴遷移放射の実証試験は加速器の電子ビームラインを用いて、可視光域の遷移放射を共鳴させることで実施する。 試験で得られた結果から、共鳴遷移放射が持つ超高エネルギー荷電粒子の同定性能の評価を行う。 また超高エネルギーハドロンの同定に基づいたTeVスケールジェットのフレーバー識別について、アルゴリズムの開発を進める。 共鳴遷移放射による新しい検出器技術を内外の分野に波及させるためには、日本物理学会で定期的に研究成果を発信していく。
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Causes of Carryover |
共鳴遷移放射の数値計算の開発の遅れによるものである。すなわち共鳴遷移放射の角度分布について、先行研究との違いが生じていたため、この理解に時間を要した。数値計算の遅れがそのまま結晶の設計の遅れにつながり、同時に共鳴現象を測定する検出器の設計の遅れも引き起こした。また成膜過程で結晶に使用する素材の応力の違いにより、層数が増えた時に結晶が壊れる可能性が明らかになったため、少ない層数で共鳴を実証する必要が生じ、設計の見直しを行ったことも遅れの原因となった。次年度はこれらの遅れを解消し、予定通りの支出を行う計画である。
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