2022 Fiscal Year Research-status Report
液体キセノン中のチェレンコフ光の分光測定と大規模宇宙素粒子実験への応用
Project/Area Number |
22K03651
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 正吾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50212098)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 液体キセノン / チェレンコフ光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,液体キセノン(LXe)中で発生する微弱なチェレンコフ光について,真空紫外(VUV)の約160nmから近赤外(NIR)の約1000nmまでの広い波長領域で分光測定してスペクトルを求める。そして得られたスペクトルの情報から,LXe中を高速走行する荷電粒子を弁別する可能性を議論し,LXeを大規模に用いる暗黒物質探索や2重β崩壊探索,太陽ニュートリノ観測など,高速の電子の発生を伴うイベントの弁別が有用と考えられる最先端の宇宙素粒子実験でのチェレンコフ光の利用を推進する。 チェレンコフ光の分光測定は,LXeをチェッキングソースの放射線で励起して発するシンチレーション光を分光測定するためのVUV分光器と冷却CCDカメラを組み合わせた既存の実験系を流用して行なうが,チェレンコフ光はシンチレーション光の約100分の1の強度の微弱光のため,ノイズを十分に抑えシンチレーション光の寄与も正確に評価して差し引く必要がある。そこで,冷却CCDカメラについては熱ノイズとその揺らぎを正確に評価する。また,LXeを励起するチェッキングソースの放射線は,Sr90線源のβ線とCo57線源の低エネルギーのγ線とでチェレンコフ光の発生率が異なると予想されるので,それらによる両スペクトルを比較する。また,スペクトルの補正において波長較正と強度較正の精度も十分に上げる。 初年度である今年度は,重水素光源とキセノンフラッシュ光源を用いたVUV-UV領域での波長較正手法を確立した他,VUV-NIRの広い波長域において透明な光学結晶(フッ化マグネシウム,フッ化バリウム,合成石英)で発生するチェレンコフ光を分光測定することで,測光系のSN比の向上と強度較正手法の検討を行なった。結果の一部は,実験装置を共用する液体キセノンの赤外発光の研究発表の一部として,2022年秋と2023年春に日本物理学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年末に購入予定であった凹面回折格子の導入は米国の急激なインフレにより延期したものの,既存の回折格子を用いた実験装置を用いて光学結晶で発生するチェレンコフ光を分光測定出来ることを早い段階で実際に確認できた。そして,スペクトルを決定する上で必要不可欠な波長較正と強度較正について,従来は十分に確立していなかった真空紫外領域から既製光源で較正可能な近赤外領域にかけて確実に行なえる目処が立った。光学結晶と液体キセノンとで理論上はチェレンコフ光の強度は大きくは違わないと考えられるため,研究全体から見て研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
延期した凹面回折格子の導入について,米国の今後のインフレの動向を注視して検討するが,場合によっては既存の回折格子を用いて,既存の光源を用いた波長較正と強度較正を適用しデータ取得時間などの測定条件を変更することによって,当初の計画と同等の成果が得られないかを検討したい。
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Causes of Carryover |
年末に高額物品として凹面回折格子を新規導入する計画であったが,事前に予想出来なかった米国の急激なインフレに伴う価格上昇のため,購入を次年度に延期したため。
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