2022 Fiscal Year Research-status Report
背景事象の劇的な削減とコスト圧縮を同時に実現する原子炉ニュートリノ観測技術の確立
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22K03654
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
今野 智之 北里大学, 理学部, 講師 (60751518)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原子炉ニュートリノ / シンチレータ検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではニュートリノを用いた原子炉監視技術の構築に向けて原子炉由来の反電子ニュートリノ測定器の高精度化に取り組んでいる。高精度化の手法として検出器の有感領域を2cm程度の立方体に細分化し、環境放射線と反電子ニュートリノの反応を効率的な選別の実現を目指している。本年度は2cm角のプラスチックシンチレータキューブを製作し、4 x 4 x 4個を積層した検出器のプロトタイプを製作した。信号読み出しとして波長変換ファイバーをキューブ間に沿って3方向に通して、各方向から小型半導体光検出器MPPCを用いてシンチレーション光の測定を行う機構を作成し、その原理検証を行った。3方向に取り付けたMPPCの信号同期に成功し、反応位置の3次元座標が再構成可能であることを確認した。一方で3方向から波長変換ファイバーを通す方法は大型化が困難であることも判明し、セル構造を立方体から六角柱型に変更することでファイバーを平面方向のみに集約する構造に変更することとした。並行して原子炉ニュートリノ観測サイトとして検討している茨城県東海村・JAEA所管の研究用原子炉JRR-3にて環境放射線量の測定を行った。測定はNaI検出検出器、He-3検出器を用いてそれぞれ環境ガンマ線のエネルギースペクトルと熱中性子の信号レートを測定した。ニュートリノ測定器が設置可能な地点2か所で測定を行ったところ、γ線量が予想よりも2桁程度高く、原因として鉄などの原子核による熱中性子の捕獲反応で生じたγ線であると推定できた。測定の知見を活かして放射線シールドの開発を進め、さらなる実証試験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
波長変換ファイバーを用いたセル構造の信号読み出しの原理が可能であることが確認され、数十cm程度の規模への大型化に向けて課題も見つかった。しかし課題解決に向けてセル構造の変更方法も検討できたため、セル構造を立方体から六角柱に変更することで問題なく計画を遂行できると判断した。また、JRR-3実験サイトでの環境測定が実現し、実験サイトでの研究活動が実際に可能な状況となり、きわめて順調な進展と言える。一方で放射線量が予想よりも2桁程度高く、放射線シールドの開発など追加の開発事項が必要であることも判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は六角柱セル構造の実現に向けてエポキシ樹脂に蛍光剤を添加したプラスチックシンチレータの開発を行う。蛍光剤にはPPO0.7w%とBis-MSB0.3w%を使用したところ、市販のプラスチックシンチレータの6割程度の発光量が確認できており、添加量の最適化を進めるとともに六角柱構造の実現と波長変換ファイバーの設置方法を検証する。年度中に40cm程度のシンチレータ検出器モジュールのプロトタイプ制作を完了する。並行してJRR-3にてさらなる環境放射線測定として高速中性子量の測定を行う。測定には1m程度のプラスチックシンチレータ棒を複数組み合わせて行い、飛行時間法を用いて測定する。測定はJRR-3運転再開後の9月以降を予定している。
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Causes of Carryover |
半導体部品の品薄状態が続き、一部の部品が入手困難な状況が継続したため、一部の物品購入を翌年度に持ち越すこととした。また検出器構造に見直しが必要であるとの結論に達し検出器材料のうち、主要なプラスチックシンチレータの購入を来年度に持ち越すこととした。
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