2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K03669
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
釣部 通 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (60335338)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 連星 / 星形成 / 流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
星の大半は連星である。星形成過程のうち、連星の形成、特にその質量降着期における連星の種の成長段階に関しては、十分な理解がまだなされていない。連星の種はその形成時には星の1000分の1から100分の1という小さな質量であり、その後、周りに取り残され動的に降着するエンベロープからの質量降着を経て成長して、初めて連星が完成するが、角運動量をもったエンベロープの降着により連星の種がどのように成長し、どのような連星になるのかという流体力学過程がまだ十分に理解されていない。 本研究の目的は、流体力学に基づく理論的考察によって連星の種への降着流の物理的理解を深めることで連星形成過程の解明へ寄与することである。連星の種の成長過程においては、降着エンベロープから徐々に大きな角運動量をもったガスが内側から順に連星の周りに降着して種が成長することが期待されるが、これまでの連星降着に関する多くの研究は、連星に対して無視できる程度の質量が準定常的に降着する場合、あるいは、連星の種の質量増加が小さい段階までであった。しかし、連星の種は自身より大きな質量のエンベロープの中に埋もれているため、その中での成長過程を理解することが必要である。そこで、本研究課題では、種の質量が大きく成長するまでの成長過程の研究を行う。 研究計画初年度の今回は、初期面密度分布が円柱座標の半径の逆数に比例し、初期の比角運動量分布が質量座標に比例する等温エンベロープの降着によって連星の種の質量が成長する過程を、数値流体力学計算も用いて考察した。その結果、連星の種の成長とともに連星間距離が増加すること、この連星間距離の変化は、降着流の角運動量の一部が連星の軌道角運動量となり残りがスピン角運動量となることで定量的に説明できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、連星の形成において、連星の種の質量が大きく成長する過程の理論的研究を行うものである。申請時の研究計画においては、今年度は、初期面密度分布が円柱座標の半径の逆数に比例し、初期の比角運動量分布が質量座標に比例する等温エンベロープの降着によって連星の種が成長する過程を、数値流体力学計算も用いて考察することであった。今年度は、上記の研究計画通りの内容の研究を行ったため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた流体計算結果の物理的解釈の考察を深化させるとともに、得られた結果について、初期状態の細かな違いによる普遍性の確認も行う。また、予定通り、申請時の研究計画書に沿って、今後は、初期の角運動量分布が異なる場合についても考察を進めてゆく予定である。
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Causes of Carryover |
出席した国際会議が2023年の4月にあったため、そのための参加費、旅費、準備費用を2022年度中には執行しなかった。そのため、次年度使用額が生じたが、予定通り会議に出席して使用した。また、研究計画に沿って、数値計算を実行するための計算機システムの増強にも使用する計画である。
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