2023 Fiscal Year Research-status Report
Investigation into the Stellar Mass-Loss Based on Spatially Highly-Resolved Multiwavelength 3-D Spectra of Galactic Planetary Nebulae
Project/Area Number |
22K03675
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大塚 雅昭 京都大学, 理学研究科, 特定助教 (70399286)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 惑星状星雲 / ダスト減光 / 元素組成 / 三次元面分光 / 多波長分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は惑星状星雲の紫外-遠赤外線三次元分光データを使い、中心星付近から星間物質にまで広がる星周殻内の原子/分子ガス・ダストの完全な三次元物理量分布調査から中小質量星における恒星風質量放出の定量的解明を目指すものである。2023年度の研究ハイライトは以下のとおり。
惑星状星雲H4-1の研究:H4-1は銀河ハローに位置し、炭素が豊富で銀河系内で最も金属量が少ない惑星状星雲である。H4-1は銀河系の進化初期段階で形成されたとされているが、その起源と進化は解明されていなかった。H4-1の起源と進化を明らかにするために、三次元面分光データを用いた包括的調査を実施した。PSFを除去したデータキューブから取得した輝線画像では大質量星から進化した双極型惑星状星雲に見られる赤道ディスクを検出した。新たに開発した完全データ駆動型解析法により、元素組成比、ガスとダストの質量を導出した。観測量すべてを光イオン化モデルと連星核合成モデルの両方で再現、検証することにより、H4-1は現在白色矮星の冷却段階にあり、進化途中で合体を経験したと結論付けられた。研究成果は、低質量星の進化を理解する上で重要であるだけでなく、銀河ハローに多数存在する炭素過剰の低金属星の起源とこの先の進化についての洞察を提供している。研究成果は2023年12月にPASJ誌にて出版した。
計算コードの新規開発:高空間分解能及び高S/N比の三次元スペクトル画像を短時間に構築するための計算コードを新規開発した。このコードは、以前から問題視されていたデータシグナル間の微小な差異が引き起こすスペクトル画像上の段差を完全に解消するためにデータステッチングの概念を取り入れている。この改善により、S/N比が大幅に向上した三次元スペクトル画像の構築に成功した。また、計算時間が従来の6分の1にまで短縮、研究の効率性も大いに向上することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属先の人員が一時的減少により共同利用運用業務が増加したため、本プロジェクトに当てることができた時間は2022年度に比べると減少した。しかし、上記のとおり、研究プロジェクトの効率向上のための計算コードの開発に成功し、プロジェクトに関する査読論文も出版できている。よって、進捗状況を「おおむね順調」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は上記で述べた計算コードの洗練、観測データの測定量のみで、如何なる仮定も導入せずとも選択減光量、減光量、電子温度及び密度のすべてを一度に求めることができる計算コードの完成、そして、複数の惑星状星雲における物理量空間分布に関する査読論文の出版を目標とする。
|
Causes of Carryover |
研究進捗の遅れにより、予定した国内外の研究集会への参加を一部キャンセルしたた。そのため、に計上していた旅費を消化しきれなかった。次年度使用額は観測機器部品と計算機の購入、論文出版費用、研究集会旅費にあてる予定である。
|
Research Products
(7 results)