• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2022 Fiscal Year Research-status Report

星間リン化合物のミリ波・サブミリ波分光

Research Project

Project/Area Number 22K03692
Research InstitutionInstitute of Physical and Chemical Research

Principal Investigator

小山 貴裕  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (00738396)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2027-03-31
Keywords分子分光学 / 星間分子 / 回転遷移 / 実験室分光
Outline of Annual Research Achievements

極低温,超高真空の星間空間では,地球環境下では見られない特異な化学反応によって,様々な星間分子が作られる。原始地球の形成時,あるいは彗星・塵などによってそれらが地球にもたらされ,生命の発生に繋がった可能性があることから,星間分子の生成過程や,惑星系のもととなる原始惑星系円盤の化学組成を明らかにすることは,天文学研究の重要な課題の一つとなっている。なかでも,118種類ある元素の内,リンは細胞膜を構成するリン脂質や遺伝子を担うデオキシリボ核酸を構成する生命にとって必須の元素である。しかし,リン化合物について,実験室での精密な分光測定データが限られているために,星間空間におけるリン化合物の研究は,他の分子に比べて大幅に遅れている。本研究は,この問題に,リンを含む分子のミリ波サブミリ波帯での直接(実験室)分光測定により取り組む。ALMA 望遠鏡は,230 GHz 帯 (Band6),350 GHz帯 (Band7)で特に,非常に高感度かつ高分解能の観測がなされており,実際,観測論文のおよそ7 割がこれらの周波数帯のデータを使ったものである。本研究に用いる放射型分子分光計SUMIRE は,このBand6 (215-265 GHz)での分子の高感度直接分光が可能な世界で唯一の装置である。
昨年度は, リン化合物の測定に向けて実験装置の改良を主に行った。目的分子をセル中での試料ガスの放電分解で生成する際,発生する熱でセルが割れる可能性がある。このセルを冷やすため,大量の液体窒素を流すためのタンクを導入し,セルを冷却するための銅製の液体窒素ジャケットも別途製作した。なお,この改良の中で,放電セルの中の圧力をガスの種類によらず正確に測定することも極めて重要であることがわかったため,真空計としてよりよい性能のキャパシタンスマノメータを導入した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

放電実験用の石英セルを新たに製作する予定だったが,コロナによるその後の世界的な物流の遅延および原材料の高騰により,納入の遅れと大幅な予算超過が見込まれた。そこでセルは他の実験で使用しているボロシリケイト製の物を代わりに用いることにした。ただし,石英製に比べて耐熱衝撃性が劣るため,そのまま用いると放電による熱で破損する可能性があった。そこで新たに液体窒素を用いたセル冷却ジャケットを作成した。それに伴い,大容量の液体窒素タンクを購入し,圧力計 (キャパシタンスゲージ)もインフィコン社製のより安定して圧力が測定できる物に変更した。なお,研究所内の新古品として適切な電源を手に入れることができたため、圧力計が予定より高額になったものの計画に支障・変更はなく,概ね順調に研究を推進できている。
また,放電セルを載せるための架台を作成し,受信機の改良も行った。

Strategy for Future Research Activity

分子輝線の測定に向けて,スペクトル線への地磁気の効果を打ち消すためにガスセルの前後,左右,上下に三つの磁場補正コイルを配置する。また,分子の放電生成用のホロカソード電極をセルに組み込む。
真空ポンプが納入され次第,一硫化炭素CSなどの分光学的によく調べられている分子の輝線を測定し,電極に印加する電圧,試料ガスの圧力,濃度など実験条件の最適化を行う。また,C4Hなどのラジカル種を測定することで,磁場補正コイルの適切な印加電圧を決定する。これらが完了次第,メチルホスフィン三種 (P(CH3)3,P(CH3)2H,P(CH3)H2)などの輝線の測定を行い,BAND6と7における正確な遷移周波数を決定する。
決定した遷移周波数を元に,アルマ望遠鏡の観測結果の中に対応するラインが無いか確認し,これら分子の存在量や分布および星間空間での生成過程を明らかにする。

Causes of Carryover

使用予定であったSUMIRE専用の真空ポンプが故障し,研究と並行して進めているSUMIREの広帯域化(受信機の測定周波数範囲をBand7まで拡張し,これまで測定できなかったサブミリ波領域での分子輝線の測定を可能にする計画。研究協力者である渡邉祥正(芝浦工業大学准教授)や坂井南美(理研主任)らが本研究とは別に推進している)のほうで、別途ポンプを購入することになった。しかしその納品がウクライナ情勢の影響で大幅遅延しており,本実験でも薬品を用いたテスト測定を延期せざるを得なかった。ポンプが納入され次第,薬品を購入しテスト測定を行う。なお、本研究全体への影響は限定的である。

URL: 

Published: 2023-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi