2023 Fiscal Year Research-status Report
導出手法を改良した新しい電波掩蔽データによる火星大気の主成分凝結に関する研究
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22K03701
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
野口 克行 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (20397839)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 火星 / 二酸化炭素 / 大気波動 / 火星大気 / 二酸化炭素凝結 / 極冠 / 大気重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に入手及び整備したデータセットにより再導出した火星大気の気温の高度分布データの解析を実施した。解析に使用した気温の高度分布データは、マーズ・グローバル・サーベイヤー(Mars Global Surveyor、MGS)探査機で実施された電波掩蔽観測による気温データである。このデータの再導出作業においては、同じく米国の火星探査機であるマーズ・リコネッサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter、MRO)搭載の熱赤外センサMCSによる気温データを平均場として利用している。電波掩蔽観測においては、気温の高度分布に加えて各高度における気圧も同時に得られている。そのため、理論式を用いて火星大気の主成分である二酸化炭素の凝結温度を計算することが可能である。このとき、二酸化炭素の分圧(混合比)も必要であるが、ここでは過去の火星着陸機の観測で得られている標準的な値である95.7%を用いることとした。ただし、極夜域では二酸化炭素の凝結によってその混合比が変わっていることに注意が必要である。計算によって得られた凝結温度と、観測で得られた気温とを比較し、二酸化炭素の凝結の時空間分布が従来データと比較してどのように変わるのかを調べた。その結果、従来データでは高緯度側で気温の過大見積もり、低緯度側では過小見積もりになっているために二酸化炭素凝結の検出も低緯度側に偏っていることがわかった。再導出データによって、従来考えられていたよりも高緯度側において二酸化炭素凝結が多く発生している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究進捗を踏まえて、研究計画段階において想定した解析を引き続き実施し、解析対象データを用いた処理を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
MGS電波掩蔽観測における気温の高度分布の再導出データを用いて、気温擾乱に着目した解析と、CO2過飽和度との関連性に関する解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費及び物品費の一部が想定よりも少なく済んだため、残額が発生した。この残額は、翌年度に旅費または物品費の一部に充当する予定である。
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