2023 Fiscal Year Research-status Report
外気圏リトリーバル手法を用いた火星外気圏大気と火星衛星フォボスの相互作用の研究
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22K03708
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
益永 圭 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (60909521)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 火星 / ピックアップイオン / 外気圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
火星衛星の公転軌道には火星外気圏大気が広がっており、火星衛星表面は火星大気によって汚染されている可能性が高い。そのため、将来日本の火星衛星サンプルリターン計画によって持ち帰ったサンプルを分析する際は、火星大気による汚染の効果を考慮に入れる必要がある。しかし、これまでの探査で火星衛星の観測機会は少なく、火星大気と火星衛星の相互作用についてはよく分かっていない。そこで、本研究は火星周辺のピックアップイオンの観測データを解析し、ピックアップイオンの源である外気圏大気の数密度分布を導出する「外気圏リトリーバル手法」を開発する。これにより火星外気圏の三次元分布を作成し、火星大気が火星衛星表面へ輸送される量を明らかにすることを目的としている。 今年度は火星探査機MAVENによって観測された代表的な観測例を選定し、外気圏リトリーバル手法を論文として詳細にまとめた。論文は国際誌へ投稿し、現在査読を経てリバイス中である。今後はこの手法を用いて統計解析を行うことにより、火星外気圏の太陽放射や太陽風、季節依存性などを調べる予定である。また、この手法は火星だけでなく、ピックアップイオンが存在するさまざまな天体環境に応用可能である。過去、現在、将来の惑星探査ミッションに応用することにより、さまざまな天体からの大気流出現象の理解につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は外気圏リトリーバル手法を論文としてまとめることができた。来年度はこの手法を用いて統計解析を進めることにより、火星外気圏の時空間変動の太陽放射、太陽風、季節依存性などを調べることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は開発した外気圏リトリーバル手法を用いて統計解析を進める。10年にわたるMAVENのピックアップイオン観測データを解析することにより、火星外気圏の太陽放射、太陽風、季節依存性などを調べる。これにより外気圏の時空間変動の仕組みを解明し、火星を周回する月の表面に与える影響について議論を進める。
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Causes of Carryover |
今年度はMMXのサイエンスチーム会議が日本で開催され、国内旅費となったため使用額が抑えられた。次年度は海外でのサイエンスチーム会合への参加や国際学会での発表や複数の論文の出版を予定しているため、これらの費用にあてる予定である。
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