2023 Fiscal Year Research-status Report
氷床表層部における気泡-空隙間ガス分別現象の解明-回転ラマン分光法を応用して-
Project/Area Number |
22K03713
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
大野 浩 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80634625)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 氷床 / フィルン / 気泡 / ガス分別 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究(氷化深度付近における気泡のラマン分光分析)で明らかになった,氷床表層部から存在すると考えられる微小気泡(通称マイクロバブル)のガス分別が卓越しており,このマイクロバブルのガス分別が氷床深部のガスシグナル(⊿O2/N2)の成因になり得るという観測事実に基づいて,南極氷床内陸部の表面積雪のマイクロフォーカスX線CT解析を実施し,マイクロバブルの直接観察および空間分布の把握を試みた. 今回調べた表面積雪はドームふじ基地近傍の深度約0.6mから採取され,サンプリング後の変態を防ぐために1ブロモドデカンを空隙に充填したものであるが,X線CT解析において予想されたような微小気泡の存在は認められなかった. この解析結果は,マイクロバブルは従来考えられているようにフィルンの最上部にはじめから存在するわけではなく,より深部で(しかし比較的早い段階で)形成されることを示唆している.その一方で,実際には存在する微小気泡を見逃している可能性も否定できない.今回解析した画像データは氷と空隙の部分のコントラストが低く,ノイズによって両者の二値化が困難であったため,今後X線CT撮像時の露光時間を調整する(低い吸収域に合わせる)ことで見分けが容易になり,マイクロバブルの有無がはっきりするものと思われる. 引き続きマイクロフォーカスX線CTによるマイクロバブルの空間分布の把握に努めるとともに,追加のラマン分光分析を行って微小気泡のガス分別の深度依存性も合わせて調べることで,当該現象の解明を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微小気泡においてガスの分別が卓越しており,この分別現象が氷床深部におけるガスシグナルの成因になり得るという重要な知見が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
微小気泡の起源や,フィルン内部でガス分別が進行するプロセスを明らかにすることが今後の課題である. 前者については,マイクロフォーカスX線CT解析において,最適な撮像条件見つけることで氷と空隙の相分離を明瞭化し,フィルンに内部のマイクロバブルの空間分布を把握することで明らかにできると考えている. 後者については,フィルンコアに含まれる微小気泡のガス組成の深さプロファイルをラマン分光法を用いて調べることで,全容が明らかになると考えている.
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