2023 Fiscal Year Research-status Report
Change in Kuroshio under global warming: Assessment of its impact on sea surface temperature and extreme weather events around Japan
Project/Area Number |
22K03714
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 周作 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50547320)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 黒潮大蛇行 / 黒潮流速変化 / 降水量 / 豪雨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、(1)観測資料・最新鋭気候モデル出力値をもとに黒潮の長期変化およびその物理機構の解明、(2)日本周辺の顕著な海面水温上昇の要因の同定、(3)気候シミュレーションを実施することで日本の異常天候への黒潮温暖化の影響を評価することである。現在、上記3項目を並行して実施ており、本年度に得られた各項目の研究実績の概要は次の通りである。 (1)黒潮変化:昨年度の観測資料解析結果の妥当性を検証するために、気象庁気象研究所が作成した渦分解海洋モデルによる歴史実験出力値・将来気候予測値を収集し、解析フォーマットへの変換作業を行った。観測資料解析結果と同様に、黒潮流速の強化傾向が同定された。現在、その要因として主水温躍層の浅化の影響の検討を開始した。 (2)日本周辺海面水温上昇:2017年夏から始まった黒潮大蛇行に伴い発生した関東・東海沖沿岸昇温を解析対象とし、衛星観測資料を用いて昇温の持続性およびその振幅について調べた。その結果、大蛇行期間の60%以上の期間で沿岸昇温が発生していること、その振幅が約3度と非常に大きいこと、そして海洋熱波に分類されることなど統計的な特徴を明らかにした。 (3)沿岸昇温に起因した夏季東海地方の降水量増加:(2)で見出した関東・東海沖沿岸昇温が日本の夏季降水量に及ぼす影響を定量化するために、領域大気モデルを用いた数値シミュレーションを実施した。その結果、沿岸昇温に伴い大気下層の水蒸気が増加し、これにより潜在的対流不安定状態が励起され、降水量が増加することを見出した。そして、黒潮大蛇行(沿岸昇温)により、東海地方の降水量が約1.5倍も増加することを明らかにした。本項目の成果については、日本気象学会秋季大会などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、気象庁気象研究所作成の高解像度海洋モデルによる将来海洋予測データを入手し、解析フォーマットへの変換作業を行いつつ、日本周辺で発生している海洋顕著現象に注目しながらスーパーコンピューターによる気候シミュレーションを行った。その結果の1つとして、黒潮変化により発生した関東・東海沖の沿岸昇温により、日本の降水量が約1.5倍も増加することを発見した。 2024年4月には国際学術誌に論文を投稿予定であり、成果は着実にでている。以上より、実施計画は概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ本研究は概ね順調に進展しており、今後も実施計画どおりに進める。研究計画に関して特段の変更は必要としていない。現在進行形で発生している海洋顕著現象と黒潮の関係にも着目することで、本研究課題の発展的解析にも取り組んでいくことを計画している。
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Causes of Carryover |
今年度に成果の一部を学術論文として投稿する予定でいたが、十分なサンプルの確保と研究の質の向上を試みた結果、投稿が次年度になったことが次年度使用額が生じた主たる理由である。なお、これは計画に遅れが生じているわけではなく、多くの研究成果が出ているが所以である。
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