2022 Fiscal Year Research-status Report
成層圏突然昇温に代表される冬季北半球極渦変動の季節内・季節予報特性の体系的解明
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22K03719
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
田口 正和 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50397527)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 成層圏突然昇温現象 / 季節予報 / 成層圏極渦変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には、欧州連合C3Sプログラムによりアーカイブされている6つのシステムによる北半球冬季季節予報データを、成層圏突然昇温現象(MSSW)の発現頻度と、MSSWに関連する季節内変動の観点から調査した。MSSW発現頻度は、システムにより、現実よりも過大にあるいは過小に再現されている。これらの相違は、成層圏極渦(極夜ジェット)の平均強度と相関している。すなち、極渦が平均的に強いシステムでは、MSSW発現頻度が低く、またその逆も成り立つ。季節予報データにおけるMSSW発現頻度は、準二年周期振動(QBO)の東風位相時に、西風位相時よりも、高くなる傾向にある。この関係は現実大気と整合的だが、現実よりも弱い。同様に、季節予報データにおけるMSSW発現頻度は、エルニーニョ/南方振動(ENSO)現象のラニーニャ時よりもエルニーニョ時に高い。これは、対象期間においてエルニーニョ時に頻度が低くなっている現実大気での結果と一致しないものの、力学的には筋が通っている。また、対象全システムは、MSSW発現前の下部成層圏における波活動フラックス増大や対流圏惑星波の偏差パターンといった、前駆現象をよく再現している。 これらの解析は、当初の研究実施計画の最初の部分にあたり、その結果は季節予報データの基本特性として重要である。これらの結果は、雑誌“Atmosphere”に論文掲載された。 また、次の観点として、季節予報スキルやシグナル/ノイズ(SN)比に関する調査に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画(3年)は、大きく3つの観点(部分)から構成されている。上記の研究実績は、そのうちの最初の部分にあたり、すでに論文掲載された。季節予報スキルやSN比に関する調査は第二の部分にあたる。現在、その調査を進めており、2023年度前半には論文投稿できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
第二の観点として、C3Sシステムの、北半球冬季成層圏極渦変動に対する季節予報スキルとSN比の調査に着手した。この調査では、たとえば冬季(12~2月)平均に着目して、各システムについて、代表的指数の季節予報スキルとSN比を検討する。代表的指数として、ENSO・QBO・極渦変動を取り上げる。SN比は、観測とアンサンブル平均間の相関係数と、任意のアンサンブルメンバーとアンサンブル平均間の相関係数を比較することで検討する。たとえば後者の相関係数が高ければ、それは予報のSN比が高すぎる(ノイズ、すなわちスプレッドが小さすぎる)ことを含意する。同様の解析を、対象時間スケール(リードタイム、および時間平均を計算する長さ)を変更して実施し、時間スケールに対する依存性を検討する。また、冬季におけるMSSW発現の有無についても、季節予報スキルとSN比を検討する。 極渦変動の季節予報スキルとSN比に対する、QBO-極渦変動間のテレコネクションの影響を調査するため、テレコネクション強度(両指数の相関係数)によって各システムのアンサンブルメンバーを2グループに分割して、比較する。テレコネクション強度が強いグループが、高い予報スキルを示すと考えられる。 第三の観点として、現実に発現したMSSWに着目し、季節内・季節予報の良し悪しと、初期発展・外的要因の関連を、多数事例により検討する。各MSSWの惑星波強制の起源を特定・分類し、各グループの予報困難さや外的要因との関連を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍が続いたため、外国で開催された学会への現地参加をとりやめ、オンライン参加とした。当初購入予定としていたワークステーションがモデル変更となり、その後の機種選定に時間がかかった。2023年度に機種選定・購入を進める予定である。また、データストレージ機器導入費用や学会参加旅費の支出を予定する。
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