2023 Fiscal Year Research-status Report
成層圏突然昇温に代表される冬季北半球極渦変動の季節内・季節予報特性の体系的解明
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22K03719
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
田口 正和 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50397527)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 季節予報 / 冬季成層圏極渦 / 成層圏突然昇温 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度には、冬季北半球の成層圏極渦(SPV)変動の季節内・季節予報に関して、主に2つの分析を実施した。 一つ目の分析では、SPV変動、およびテレコネクションを通じて関連するエルニーニョ/南方振動(ENSO)や準二年振動(QBO)、に対する季節予報の特性(特に予報スキルとSN 比)を調査した。その結果、予報はENSO・QBO変動に対して高いスキルを持つが、SN比が高すぎることが明らかとなった。一方、冬季平均の SPV 変動を予測することは依然として困難であり、ENSOやQBOと比べて予報スキルが限られている。予報モデルがQBOとSPVのテレコネクションをより適切に表現できれば、SPV 予報のスキルが向上する可能性が示唆された。これらの内容について、Journal of Geophysical Research誌に論文投稿した。論文は、改訂の後に、受理・出版された。 二つ目の分析では、東アジアの流れパターンとSPV偏差の力学結合を再解析データを用いて調査した。経験的直交関数展開・クラスター解析を用いて、対流圏における卓越パターンを5個特定した。SPV偏差には、下部成層圏の東西風偏差あるいは成層圏突然昇温(SSW)の発現に着目した。その結果、5パターンのうち2個は、対流圏惑星波と成層圏への波活動フラックスの変動に関連していることが明らかとなった。2個のうち片方は、気候学的な東アジアトラフとほぼ同位相で出現し、SPVを弱める傾向がある一方、他方は逆のセンスにある。これらの結果は、異なる地域の流れパターンがSPVを介して相互に関連する可能性を示唆するとともに、東アジアの気象状況に対する成層圏影響についてのさらなる調査を促進する。これらの内容について、Advances in Atmospheric Sciences誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の季節予報データの特性把握は、本研究計画(2022~2024年度)の中心部分にあたり、その結果が2年目に論文発表できたことから、本研究計画がおよそ順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度には、主に2つの分析を進める予定である。 第一に、対流圏における惑星波の挙動とSPV強度の時間変化を精査し、特にSSWのような成層圏イベントの起源を探索する。成層圏イベントを、対流圏惑星波の増幅の有無・極夜ジェットや屈折率の構造・SPVの水平構造などによって、整理する。成層圏イベントの起源によって、その季節予測可能性(予報の成否)が変化するか調査する。 第二に、SSW発現に対する季節内予報(特定のSSWを、発現時期を含めて予報する)と季節予報(不特定のSSWの発現確率を示す)を橋渡しする見方を提案する。各年での季節進行に伴って季節内・季節予報が切り替わる状況や、季節内・季節予報が年によって大きく異なる状況を観察し、初期条件・境界条件・予報時間スケールの役割を考察する。
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Causes of Carryover |
2023年度に投稿した論文の査読・改訂・支払い手続きが年度内に間に合わなかった。2024年度にその論文が出版された際に、その出版費用の支払いをするとともに、データストレージ機器導入・追加費用や学会参加旅費の支出を予定する。
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