2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K03726
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
石橋 俊之 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 主任研究官 (30585857)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気状態を高精度で解析(推定)することは大気のカオス性により難しい科学的問題である。データ同化は、大気に関する膨大な情報(観測、予測、物理法則)を確率密度関数によって無矛盾に統合してこれを可能にする。しかし、データ同化には多くの経験的調整パラメータが含まれており、解析精度を強く制限している。特に各情報の確率密度関数は、経験的パラメータの塊となっている。本研究の目的は、経験的パラメータに依存しない高精度な大気解析の実現である。このために、大規模アンサンブルによる新しい客観推定法の構築等により確率密度関数を精緻に推定する。本研究により大気解析の精度が飛躍的に向上する。 2022年度は、複数の推定手法を統合して誤差の確率密度関数を水物質分布への依存性も含めて推定し(PDF1と呼ぶ)、さらに推定された確率密度関数について、推定スキームの誤差の範囲で補正した確率密度関数を生成した(PDF2と呼ぶ)。これらを用いて、全球数値天気予報システムで、一ヶ月間の解析、予報サイクル実験を行った。この実験では、ハイブリッド4次元変分法を用いた。両者の精度を比較した結果、PDF2では、PDF1に比べ、有意に予測精度が向上することがわかった。先行研究では、確率密度関数の推定誤差の起源の一つとして、背景誤差の流れ依存性の表現誤差が考えられていたが、ハイブリッド4次元変分法でも依然推定誤差が無視できないことがわかった。また、確率密度関数の各成分がどのように解析場に影響し、予報精度の違いとなるのかについて線型及び非線形インパクト解析で明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って順調に研究成果はでており、査読雑誌に論文を投稿中であるが、論文出版が次年度以降になること、及び、国際学会等での発表やストレージ整備については次年度以降に延期したため、”概ね順調に進展している”とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度(2023)は、研究計画に従い、1000メンバ程度までのアンサンブル予報を用いて、完全に流れ依存した背景誤差の確率密度関数を生成し、これを用いたデータ同化システムで、誤差の確率密度関数の客観推定を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画していたデータ保存用の大型ストレージについては、2022年度は、電力事情から導入を見送り、既存ストレージの利用、効率的なデータハンドリングで代替することとした。また、引き続き、学会や国際会議への出張は控えたこと、研究成果の論文掲載は次年度以降になっているため、次年度使用額が生じている。
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